悠介は誕生日パーティーの夜以来、様々な理由をつけて美羽を食事や会う約束に誘っていたが、美羽は一度も応じなかった。何度か誘った後、悠介も彼女の意思が固いことを理解し始めた。普段は周りからチヤホヤされている彼も、何度か無視されるとさすがに興味を失い、それ以上彼女に接触することはなかった。その日、美羽がスーパーで買い物をしていると、偶然にも彼があるネットアイドルと一緒にいるところに出くわした。彼は美羽に気づいたが、あえて見て見ぬふりをし、ネットアイドルを連れて車に乗り込んだ。それで二人の縁も完全に切れた。悠介が彼女を頻繁に誘っていた頃は、彼のつながりでいろんな集まりに顔を出していた美羽も、今やその世界とは遠ざかり、彼らの動向を知ることもなくなった。その日の夕方、花音が美羽のドレッサーに腰掛け、興味深そうに話を持ちかけた。「私のオフィスの同僚が、たまたまそういう集まりに行くんだけど、そこの一人が言ってたのよ。夜月会長は月咲を気に入らなくて、こっそりどこかに送り出したらしいの。しかも翔太にはその行き先を教えなかったみたいで、翔太は最近めっちゃ怒ってるんだって」美羽はその話を全く知らなかった。しばらく考えてから、ようやく「そうなの」と答えた。よくよく考えてみると、それほど驚く話でもなかった。陸斗はまだ完全に引退しておらず、彼の力は依然として強かった。翔太が月咲を妻にすると宣言したのは、陸斗の一線を越えたことになり、彼を怒らせ、手を打たせたのだろう。結果的に二人を引き裂いたというわけだ。「それだけじゃないのよ、さらに驚いたことに、翔太は最近、新しい秘書を雇ったんだって。その子も大学生で、しかもバレエをやっているらしくて、まるで以前の月咲みたいに、いつも一緒にいるらしいわ」花音はため息をつきながら頭を振った。「私の考えでは、翔太は単に夜月会長を怒らせるためにそんなことをしてるんだと思う。『月咲を一人送ったなら、また新しい月咲を見つければいいんだ』って感じかしら。大学生なんていくらでもいるんだから」美羽はしばらくの間、静かにしていたが、やがて「彼がどうなろうと、私には関係ないことよ」とだけ言った。彼女はずれたアイラインを拭き取り、再び描き直し、最後に口紅を塗ってバッグを手に取った。「先に行くわ。今日は多分、夕食は家に戻らないと思う」花音
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