慶太は車を少し走らせると、美羽を碧雲グループの前まで送った。美羽は天ぷらの袋を持ち、車を降りると軽く腰を曲げて手を振った。一方、その様子を偶然目撃したのは、碧雲グループに翔太を訪ねてきた直樹だった。彼は眉を上げ、先に会社に入った。直樹が翔太を訪ねるのは日常茶飯事であり、特に通報もなくそのままエレベーターで上階に向かった。オフィスの扉を軽くノックすると、中から翔太の声が聞こえた。「入れ」直樹は扉を開けて入室した。翔太は視線を上げて一瞬彼を見たが、すぐに書類に戻った。「座って」直樹は遠慮することなく、翔太のコーヒーマシンを使い自分用のコーヒーを淹れた。一口飲むと、何気ない様子で話し始めた。「真田秘書って、昔から本当に男にモテるな。以前、悠介は彼女に夢中だった。今度は慶太か。さっき慶太が彼女をここまで送ってきたのを見たけど、二人の接点はいつからなんだ?」翔太は顔を上げ、眉をわずかにひそめた。直樹は意味ありげに続けた。「でも確かに、真田秘書は慶太の好みにピッタリだ」慶太は見た目は知的で品行方正そうだが、実際には美羽のような細い腰を持つ女性に目がないと知っていた。翔太はコーヒーを一口飲んだ。しかし、それはすでに冷めており、彼の表情も冷たくなった。直樹はのんびりした口調で言った。「前から言っていただろう。真田秘書を狙っている男がいっぱいいるって。お前は信じなかったけどな」ちょうどその時、美羽が社長室のドアをノックした。翔太は感情を表に出さずに言った。「入れ」美羽が入室すると、直樹がいることに気づき、丁寧に挨拶した。「鬼塚社長、こんにちは」直樹は軽く頷き返した。美羽は翔太のデスクに近づくと、持っていた書類を差し出した。「夜月社長、先ほどのご指示通り、条件に合う候補者を見つけました。こちらが彼女の履歴書です」翔太は書類を受け取らずに、視線を美羽に向けた。美羽はいつものように白いシャツとタイトスカートのセットのオフィススタイルだった。シャツはスカートの中にきっちりと収められ、その細くしなやかな腰のラインを際立たせていた。白いシャツというのは最も正式派な服装だが、その分危うさも持ち合わせていた。束縛感がありながら、それを逆に強調していたのだ。美羽がその格好で慶太と会ったのなら、彼が興
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