北原萌香は、自分で作ったお菓子を柏原介に渡し、恥ずかしそうに言った。「社長、一日中働いて本当に大変ですね。これ、私が自分で作ったものです」柏原介は優しく彼女の髪を撫でながら、「思わなかったな、君、手先が器用だ。かなり時間かかっただろう、心を込めてくれたんだな」と言った。「初めて作ったので、美味しくないかもしれないと、心配しています。社長はきっと奥さんの料理をよく食べてるんでしょう。私が作ったものよりずっと上手ですよね。ただ、社長が私を嫌わないでくれれば」私は高橋家の大事なお嬢様として、料理をするなんて経験はほとんどない。確かに、柏原介の家庭はそれなりに裕福ではあったけれど、私と結婚することは彼にとっても、高嶺の花を手に入れたと言える。やはり、柏原介は彼女の言葉に驚いた様子で、「柏原清夏は料理ができない。彼女は仕事仕事ばっかりで、生活面では本当にバカだ。どこが君ほど比べられるもんだろう」と言った。北原萌香は褒められたにも関わらず、喜んでいる様子しなく、逆に眉をひそめ、少し憂鬱そうに言った。「奥さんと比べるなんて、無理です。私は、子供の頃から家の事情が良くなかったので、何でも自分で学んでやるしかありませんでした」柏原介は彼女の可哀想な様子に心を打たれ、優しく慰めた。「家庭環境が良いことが必ずしも良いことではない。柏原清夏みたいに甘やかされている人もいるから。君は何でも自分でやっているし、こんなに頼りがいがある。高貴な家庭に育ったお嬢様たちよりずっと強いだぞ」私はドアを押し開け、二人の会話を遮った。「北原さん、家庭環境が苦しいなら、なおさら真剣に仕事に取り組んでキャリアを築くべきです。どうしてこんな暇な時間に、社長のところにお菓子を持ってきていますか?仕事でいっぱいミスをしたと聞いていますが、お時間があれば、問題を解決しなさいよ、皆さんに迷惑をかけてしまいますから。それと、会社で私を柏原社長の奥さんと呼ぶ人はいませんので、柏原専務と呼んでください」北原萌香は私が来ると、最初は顔色が固まったが、すぐに泣きそうな表情になり、怯えた様子で言った。「申し訳ございません、柏原専務、私が知らなかったんです。私はまだ来たばかりで、何もできなくて、同僚も教えてくれなくて、本当に時間がかかってしまって、皆さんに迷惑をかけてしまいました」柏原介はこの女の言
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