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第6話

柏原介は、私を完全に掌握したと思い込み、その過信が私に隙を与えた。

北原萌香の存在に気づいてから、私は夫婦の財産を密かに移転し始めていた。

週末、私は両親の家に帰り、会話の中で、かつて家族と共に立ち上げた企業「千川株式会社」について話が出た。

千川株式会社は、規模こそ小さいものの、豊和株式会社の競合相手であり、製品ラインや市場のターゲットを差別化しているため、今の市場環境では大きな成長が期待できた。

母は心配そうに尋ねた。「千川社を引き継いだら、忙しすぎて大変じゃないかしら?」

「千川社には大きな可能性を感じているから、これからはそちらに力を入れていくつもり。母ちゃん、私のこと信じてないの?」私は首を振り、苦情を言わず、くだらない人間関係のことを持ち出して気を重くすることもなく、ただこう答えた。

母は安心したように微笑んだ。「もちろん信じてるわ。助けが必要ならいつでも言ってちょうだい。ずっと前から、あなたが家業に戻ってくるのを望んでいたのよ。」

私は少し後ろめたく感じた。かつて、豊和社が益々発展していたのを見て、夫婦一体だからと思い、すべての心血を豊和社に注いできた。しかし、私の貢献は柏原介にとってただの権力争いとしか映らなかったのだ。

私はずっと、豊和社の共同経営者であると思っていたが、柏原介の考えはまるで違っていた。

豊和社を離れることを決意したとき、柏原介はただ笑った。豊和社や彼を諦められないと信じて疑わなかった。

柏原は、私がいずれ彼に戻るだろうと待っていたが、最後に、手に入れたのは、私の辞表だった。

私は早くて行動し、豊和社を去る際、多くの顧客と資源を引き連れていった。さらに高橋家の強力な支援と市場の好機に乗って、千川社をあっという間に軌道に乗せた。

その一方で、私のいなくなった豊和社は一気に弱体化し、千川社と他の競合企業の圧力に加え、経営陣の誤った判断で株価は急落した。市場は豊和社の将来に疑念を抱くようになった。

柏原介も、私がいかに豊和社にとって重要であったかを理解し、私に会うように申し出てきた。「今の豊和社の危機は、お前が戻れば解決できる。お前だって豊和社が落ちぶれるのを黙って見過ごすことはないだろう。お前も豊和社をここまで育てるために、多くを捧げてきたんだから」

私は軽蔑的な眼差しで彼に問うた。「それが人に頼む態度なの?
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