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第9話

「じゃあ、彼女は今どこにいるのかしら?」と私が一言放つと、柏原介は言葉を失った。

交通事故以来、北原萌香はまるで人間蒸発したかのようにニュースを絶っていた。

私はため息をついて言った。「私はあなたと勝ち負けを争うつもりはなかった。あなたは自分が成功を収め、どんな女性でも手に入れると思っていたの?若く美しい大学生、北原萌香もあなたに夢中だった。でも、あなたは知らなかったのよね?彼女がどれだけの男を引き寄せたって」

私の言葉は、彼が自分で作り上げた幻想を粉々に壊した。柏原介は驚きと怒りに満ちた表情で、「ありえない!お前は嘘をついてる!」と叫んだ。

彼の怒りには目もくれず、私はただ自分自身の哀れさを感じた。「かつて、あなたを心から愛し、全てを捧げようとした女性がいたかもしれない。でも、あなたはその人を自らの手で遠ざけてしまったのよ」

間もなく、彼は私が言ったことが本当だと知ることになる。

北原萌香は、彼との関係で得た財産を持ち逃げした。さらに、彼女は私に彼との付き合いの詳細を渡し、それを武器に使うよう勧めてきた。私は自分の利益を守ると同時に、柏原介のスキャンダルを世間に広めた。

愚かで自覚のない柏原介が女性に騙されていたことは、業界内で笑い話となった。

北原萌香は、私の手配により既に海外に逃げ、自由に暮らしていた。

しかし、間もなく彼女に関する新たなニュースが私の耳に届いた。

海外でも北原は、「男を手玉に取る悪女」としての道を続けていたが、今回はある偉い女性に引っかかり、足を折られ、命まで脅かされる始末だった。

追い詰められた彼女は、私のことを思い出し、助けを求めて電話をかけてきた。

「高橋さん、お願いだから助けて!」北原萌香は絶望の涙声で私に訴えかけてきた。

今回は彼女が本気で「高橋さん」と呼んでいることは確かだろう。しかし、彼女を助ける力はない。

「北原さん、もう約束を守って、あなたを海外に送っていきました。あなたも十分な財産を手に入れました。これほどの財産をこの年齢で持つことができるのは、とても珍しいことです。このまま大人しくして、適当にある若旦那に寄り添って生きれば、楽しい生活ができたはずでしょう。けれど、あなたが手を出してはいけない相手に、手を出しました。それが私と何の関係がありますか」

「高橋清夏、私を見捨てないで!」北原は声を震
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