「ほら、この前預かったバッグの話よ。ネットに出してみたんだけど、結構反応があってね」美穂は驚いて目を見開いた。「反響?日本の消費水準ってそんなに上がってるの?」「違うのよ、ただの冷やかしばっかり。そもそも誰もあんなバッグをネットに載せる人なんていないから、みんなただの興味本位よ。でも、中には撮影用にレンタルしたいっていう小規模インフルエンサーもいたわ」美穂は手を振った。「レンタルはしない、売るだけよ」「ちゃんと話したわよ。全部確認した上で、本当に買いたいって人を見つけたの。その人、3日連続でずっとメッセージを送ってきて、細部の写真を何度も頼んできたの。それに、対面での確認と交渉もしたいって」「相手の素性は分かってるの?」美帆は少し考え込んだ。「マダムたちの仲間じゃないと思う。相手が指定したのは、ちょっとマイナーな中古ブランド店。イベントに出るときにスポンサーが付かないような小さな女優が集まるところよ。もちろん、見栄を張るなんちゃってセレブも多いけどね」美穂は頷いた。「じゃあ、明日行ってみるわ」「それと、もうひとつ、今日の一番大事な話があるの」美帆は美穂の肩を引き寄せながら言った。「河合隆太監督の新作ドラマ『玲瓏物語』がキャストを募集するの。主役はもう決まってるけど、知ってるでしょ?河合監督の作品は基本的に女性キャラの群像劇。どんなに小さい役でも、演技さえ良ければ一躍有名になるのよ。今週金曜にヒルトンホテルでオーディションがあるんだけど、コネ使ってあなたの資料をなんとか滑り込ませたのよ」美穂は目を見張った。「私、まだ一本も作品を出してないのに、どうやって資料をねじ込んだの?」「私もこの業界にそこそこ長いのよ?人脈くらいあるわよ!とりあえず、マネージャーの欄には一時的に私の名前をマネージャーとして入れておいたから、後で事務所と契約したら修正すればいいよ」美帆は一呼吸おいてから尋ねた。「行くつもり?」「もちろんよ!ここまでチャンスを取ってくれたのに、行かないわけないじゃない?」美帆は喉を鳴らしながら言った。「ただ、注意点が二つあるの。まず、この募集してる役は女四号で、出番がそんなに多くないってこと。もう一つは......この作品のヒロインが愛子だってこと」美穂:「......」美帆は慎重に彼女の表情を伺った。「もし嫌
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