感謝と愛情が共存していた。しかし今、私は前へ進むべきだ。人も時間も、常に前へ進み続ける。虚無的で不安定な愛を頼らない。その道は、私が思うがままに切り開けるものだ。私はこれからずっと、幸せで、軽やかで、自由でいられる。朝藤景久のことは、私にとって、もう必要ない。朝藤景久番外:1、そして、瑞穂がいなくなった。僕は目を開けることすらできなかった。彼女が去っていく姿を見届ける勇気はなかった。その瞬間、胸の中に押し寄せる激しい痛みを感じ、思考がぼやけ始めた。瑞穂と初めて会ったのは、彼女がまだ11歳のときだった。彼女はいつも瘦せた小さな体を栖原おばさんの背後に隠し、僕の顔を見ようともしなかった。名前を呼ばれると、頭を下げたまま小さな声で「景久お兄ちゃん」とだけ言った。栖原おばさんが亡くなった日、瑞穂はその場に立ち尽くし、呆然とした表情で、涙一つ流さなかった。彼女はまるで突然声を失った人形のように、生気がまったく感じられなかった。しばらくしてから、僕を見つめながらこう言った。「景久お兄ちゃん、私の家がもうないの」その瞬間、胸が締めつけられ、息ができなくなるほどだった。気が付けば、僕は彼女を抱きしめていた。彼女はあまりにも瘦せていて、少し力を入れたら折れてしまいそうだった。僕は彼女を朝藤家に連れて行き、これからもずっと守ることを決心した。「僕がいる限り、ここがずっと君の家だ」と、彼女と約束した。2、卒業後、僕は起業を始めたが、当時の僕は若くて無鉄砲で、気が短かった。多くの人を敵に回していた。あの日、会食を終えた後、過去に僕が恨みを買った社長さんがチンピラを雇い、路地で僕を囲んだ。僕は殴られ、体中が傷だらけになり、血が目を覆い、視界が赤く染まった。バットが僕に向かって振り下ろされるのを見て、僕はゆくっり目を閉じた。しかし、予想していた痛みは訪れなかった。目を開けると、瑞穂が僕の前に立っていた。彼女はその攻撃で鼓膜を損傷し、聴力を失ってしまった。それ以来、彼女は補聴器を付けて生活するようになった。入院中、瑞穂は悪夢を見ることが多く、夜中に目を覚まし、泣き出していた。僕は彼女のそばで見守っていた。病床に横たわる彼女の痩せ細った顔を見るたびに、胸が
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