社長,奥様がまた男とデートしてます のすべてのチャプター: チャプター 311 - チャプター 320

363 チャプター

第 0311 話

しゃがんで確認したら、ご遺骨がすでにお墓に納められてしまった。彼女は振り返って男をにらんだ。「クソ野郎、イカれてるの?だったら、さっさと病院に行け!」薄野荊州はこの言葉に眉をしかめた。「悪口でもいい加減に」よくもこんな下品な言葉を言えるものだ。「直接手を出していないで、ただ悪口だけなのは、もう十分に自制してる」彼女はもう少しで爆発しそうになった。「お墓を開けろ。祖父のご遺骨を連れて行くから」「もうお墓に納めたのに。まさかもう一度お墓を移すつもり?死んでも安らかになれない。それがあなたの親孝行?」薄野荊州は彼女を見る目に皮肉を込めて、声を出した。「まあ、鹿児島にいたときは祖父の墓地は環
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第 0312 話

テレビでは紅白戦が放送されていて、にぎやかな雰囲気だった。それに対して、家がまるで墓地のように寂しく見えてきた。彼女は少しめまいがして頭を振りながら、ソファーに置いたスマホを持ち上げて、薄野荊州に電話をかけた。しばらくして電話がつながった。男の冷たい声が受話器を通して彼女の耳に入った。松本唯寧は首を傾げてソファーに寄りかかった。「荊州、こっちに来てくれないの?私一人ぼっちで、彼女は私の電話に出ないし、きっと私のことまだ憎んでいるから…」話が少し混乱していたが、薄野荊州はなんとなく彼女の話がわかった。ちょっと黙ってから、また尋ねた。「お酒飲んだ?」「うん」「マネージャーを行かせる…」
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第 0313 話

相手の動きが速くて、彼女に唇に触れる寸前で、薄野荊州は手で遮った。松本唯寧はこれ以上続けなかった。遮られたことであろうと、彼女の自尊心であろうと、このように恥知らずなことを続けるのが許されなかった。アルコールによる勇気がただ一瞬なもので、目の中の曇りがだんだん消えてしまって、明晰に戻った。彼女はこのまま手を隔てて薄野荊州を見つめて、自嘲的な笑いが浮かんできた。「私じゃなくても、彼女とは絶対にだめだ」薄野荊州は彼女を押しのけて立ち上がってから、台所から氷水を持ってきて、彼女に投げた。寒さに震えた松本唯寧は思わず水を横に投げ捨てた。薄野荊州「目覚めた?」「…」「じゃあ、早く寝よう」
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第 0314 話

江雅子が急に倒れた理由が彼女はやっと分かった。瀬川秋辞はスマホを握りしめて、怒りが心にわき上がってきた。ちょうどこの頃、庭からエンストの音がしていた。佐々木さんがドアを開けようと台所から出てきたが、瀬川秋辞は「佐々木さん、私が行く」と呼び止めた。そう言ったら返事も待たずに、まっすぐ庭に向かって歩いて行った。帰ってきたのはやはり薄野荊州だった。だが、彼は一人じゃなく、側には松本唯寧も一緒だった。手を繋がなくても、二人は肩を並べて歩いていることからして、どう見ても仲の良く親密な恋人同士だった。彼らに向かって瀬川秋辞は大股で歩いて行った。彼女を見た瞬間、薄野荊州は思わずちょっと眉を顰めた。
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第 0315 話

「おばさんのためなら、謝りに行く私が、最後彼女に会えるかどうかは、あなたに関係なく、おばさん次第だ。もし荊州のことがまだ好きだったら、私は邪魔しないからすぐ離れるよ」と松本唯寧は言った。彼女の目の中にはかすかな得意がにじみ出ていた。瀬川秋辞は微笑みながら、彼女を見ていた。「この人は、教えてないの?私たち今の関係が...兄妹だよ」この前江雅子は彼女を養女として認めたいことがあるが、離婚の後に元旦那と兄妹になるのはいかにもおかしく感じたため、瀬川秋辞に断られた。薄野荊州は視線を取り戻して、無表情で松本唯寧を見た。「ここで待ってろ」部屋のドアが閉まっていなかったため、薄野荊州がまだ入っていな
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第 0316 話

しばらく黙っていた。彼女は話したかったが、怒りすぎて話もうまく出てこなかった。「薄野荊州、入ってきなさい!」階下の瀬川秋辞も彼女の声が聞こえた。薄野荊州がドアを開けると、目が赤くなって悔しい顔をして、自分を見つめていた松本唯寧を見た。詳しいことを聞いていないで、江雅子は歯を食いしばって先に口を開いた。「彼女と一緒に墓参りに行くの?」男は眉をひそめて、不機嫌そうに松本唯寧を見た。「……ああ」「お正月に女性と一緒に墓参りに行くって、それはどういう意味か、知ってる?」「母さん、なんと言っても、おじさんが亡くなったのは私にも一部の責任があるから。今日は彼の祭日……」「理由がどうであれ、と
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第 0317 話

松本唯寧はどさっと不安になってきた。今ではネットで彼女は薄野荊州との恋愛関係を炎上していた。このような話題性のあるニュースがあれば、彼女の人気は穏やかになってしまうだろう。しかし今、薄野荊州は声明を公表するように言っていた。主人公が直接にデマを打ち消すように声明を出したら、ある事実も一緒にバレる。つまり、今ネットで二人の幸福を祈っている大勢の人たちが、どう考えてもお金をかけた世論誘導による結果だ。松本唯寧は声を出した。「荊州、このような噂を本当に信じる人はいないよ。そのまま無視しても何日後消えるから。今のところ、声明を出したら、かえって関心を持たせるかも」電話がまだつながっていたため、
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第 0318 話

結婚してから三年間、夫としての彼は墓参りに行ったことがない。松本唯寧に与えた甘やかしと贔屓と比べて、三年間の婚姻生活が見るだけの価値もないようだった。彼女と比較しない時、薄野荊州と離婚した後、ただ「もう諦めた」「がっかりした」「好きにならなかった」などと思っていた。しかし今となって、彼のことなら、一眼さえもうんざりするようになってしまった。薄野荊州の口元を少しずつ引き締めてきた。倦厭や無関心などの情緒が瀬川秋辞の顔からはっきり見えた。彼女はエレベーターを出てから今まで、少しだけ男をチラッと見て、数秒間視線を交わしたことがある以外、その後ほとんど彼に目を向けたことがなかった。あっても、目つ
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第 0319 話

瀬川秋辞は車から降りなかった。薄野荊州は強引に降りさせていなかったが、少しも譲らないようにそこに立ちはだかっていた。これがある種の強制だとも言えた。二人がそのまま膠着状態に陥ってしまった。山の上は都会より寒くて、風も身を切るように強かった。最後に、瀬川秋辞のスマホが急に鳴り出して、その静寂を破った。画面上に映った「根本煜城」との文字は、薄野荊州の目にはっきりと映り込んだ。男の何気ない顔は急に沈んでしまった。瀬川秋辞は電話に出た。「煜城、何か用?」この口調は、彼と一緒にいた時のような重苦しい調子とは全く違うのだった。根本煜城「友達から花火をたくさんもらったんだけど、どこかで一緒にして
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第 0320 話

瀬川秋辞の視線は男の背中に落ちて、ついにいつこの願い事をしたのかを思い出してきたー確かに結婚1年目の誕生日だった。その日、薄野荊州は12時近く戻ってきてから、彼女に醜いケーキを投げつけた。それは田中栩が彼女のために作った失敗作だと言っていた。それなのに、彼女は実に喜んでいた。母がいなくなった後、彼女の誕生日を覚えている人は中村悦織以外には他にはいなかった。だから、彼女は本気にその願い事を祈っていた。薄野荊州が彼女のそばに歩いてきた。花火を見つめてぼんやりしていた瀬川秋辞を見たら、彼は少し喜んできた。「これまで見た花火で今のが一番きれいだろう。お金で買えるのは全部普通のやつなのに、ましてや
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