渡辺玲奈は説得され、井上美香に丁寧に着飾られ、盛装して参加することになった。会場に到着して、彼女はそれが普通のイベントではないことに気づいた。それは豪華客船で開催される世界規模の珍しい高価な品物の販売会だった。さらに、その販売会では多くの違法な骨董品や希少な商品が出品されていた。渡辺玲奈は、自分が祖母の誕生日宴で模写した絵もその中にあることに気づいた。彼女はその絵を指さし、井上美香に問い詰めた。「お姉さん、これはどういうこと?」井上美香は目をそらしながら、周りを指して言った。「渡辺玲奈、見てごらんなさい。今日は上流社会の大富豪や名家の婦人たちが集まっていて、一度に何百万、何千万円も使うような人たちばかり。私たちの絵が売れれば、かなりの収入になるのよ」渡辺玲奈は不満を込めて強い口調で言った。「この絵がどうしてここにあるのかを聞いているの」井上美香は気まずそうに笑い、声を潜めて言った。「おばあさんの誕生日会でたくさんのプレゼントを受け取ったのよ。少しぐらい増えても減っても、何の違いもないでしょ。それに、おばあさんは千佳からも贋作を受け取っていたんだから」渡辺玲奈は拳を握りしめ、堪えながら一言一言を噛みしめて言った。「それで、あなたが持ち出したの?」井上美香は慌てて手を振りながら説明した。「違うのよ。私はそんなことをしないわ。これを持ち出したのは私の夫だよ」渡辺玲奈は怒りで言葉を失い、すべてを理解した。これは井上美香の友人のイベントではなく、富豪たちがコレクション品や高級品を売り買いするための販売会だったのだ。井上美香は渡辺玲奈の険しい表情を見て、媚びるような口調で小声で囁いた。「こうしよう、運営側が10%の手数料を取るから、残りの利益をあなたが60%で、私が40%でどう?」渡辺玲奈は毅然とした表情で、依然として沈黙していた。井上美香は「じゃあ、あなたが70%で、私が30%で、それ以上は無理だよ」と言った。渡辺玲奈は真剣な態度で、冷静な声で淡々と言った。「お姉さん、もし私が山口恵子なら、この絵の収益はすべて慈善活動に使わなければならない。もし私が山口恵子でないなら、これは贋作であり、あなたは詐欺を働いていることになる」井上美香は頭痛を覚え、眉をひそめながら渡辺玲奈に言った。「あなたはそんなに貧乏なのに、ど
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