「何、自殺したのか?」篠田初は裁判所へ向かう途中、この電話を受けた時、完全に驚愕した。佐川利彦は隣に座って、真剣な表情で尋ねた。「何があったんです?」「裁判所から連絡があって、小林柔子が今朝、自殺したって。遺体はすでに火葬場に運ばれて焼却されたそうだ」「ありえません!」佐川利彦は断言した。「小林柔子は犯罪の容疑者です。まだ判決が出ていません。たとえ本当に自殺したとしても、法律に従えば法定の調査期間を過ぎるまでは遺体の処理はできません。こんなに早く火葬されるなんてありえません。もしそうなら......」「もしそうなら、相手が証拠隠滅を図ったか、あるいは入れ替えた可能性があるってことだな!」「その通りです!」佐川利彦はこれまでに数多くの刑事案件を扱ってきたので、いろんな奇妙な状況に遭遇したことがある。容疑者が裁判を前にして、突然「自殺」するケースも初めて遭ったではない。篠田初は脳みそをフル回転させ、瞬時にすべてを理解した。「ふふ、だから昨日、松山昌平が改心して梅井おばさんを解放した理由がわかった。結局、こういうつもりだったか?正直言って、この手口は本当に面白くない。自分の力で弁護士を立てて弁護しろよ。自分の権勢を利用して法を凌駕するなんて、本当にしょうもない!」篠田初は初めて松山昌平をこんなに軽蔑した。小林柔子というぶりっ子を守るために、まさか仮死するなんて、もう何の節操も、体面もない。本当に恥ずかしく思う。「社長、そんなに怒らないでくださいよ。前社長の地位と実力を見れば、裁判官から警察まで、誰も彼の言うことに逆らえるわけがないでしょう?」佐川利彦は肩をすくめながら言った。「でも、もし訴訟を続けたいなら、私には勝つ方法もありますけど、どうですか?」篠田初は少し考えてから首を振った。「いいえ、もういい」彼女はこれまで大きな騒ぎを起こしてきたのは、小林柔子に少し苦しんでもらいたかったからだ。今、小林柔子は彼女に追い詰められて、「仮死」で脱出するしかなくなった。これからは別の身分で、影のようにひっそりと生きなければならない。十分に惨めだ。もし彼女がこれから大人しく過ごすなら、「追い詰め」たりはしないだろう。何せ、彼女たちも母親だし、大人としての確執はあっても、子どもには罪はない。彼女は子どもにまで責任を押
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