夢から目が覚めた瞬間、和泉夕子は自分があまりに馬鹿げた夢を見ていたことに気づき、顔が真っ赤になっていた。まさか、あんな夢を見るなんて……。彼女は手を伸ばして、自分のほてった頬と、まだ微かに残る温もりを感じる唇をそっと撫でた。おそらく、昨日霜村冷司の頬に触れたのが原因で、こんな恥ずかしい夢を見てしまったのだろう。彼と五年間も一緒に過ごしてきたため、彼の存在があまりにも日常的になっていたからだ。今はまだ、その距離感に慣れていないだけで、時間が経てば落ち着くはずだ。自分にそう言い聞かせていた時、突然望月景真からの電話が鳴り響いた。彼女はスマートフォンを手に取り、冷静を装って応答した。「望月社長、何かご指示がありますか?」望月景真は彼女のビジネスライクな態度に少し不快感を覚えたが、すぐにその感情を抑え、平静に返答した。「和泉さん、今日は望月哲也がいないので、代わりに僕と一緒に入札会に同行してもらえないか?」望月哲也がいない? いつも彼の傍にいる望月哲也が、まさか不在とは……和泉夕子は一瞬疑問に思ったが、すぐに了承した。入札会が終われば、彼はおそらく帝都に戻るだろう。そのことを思うと、彼女の心は少し軽くなり、つい口を滑らせて「待っていてください」と言ってしまった。そんなに嬉しいのか? 望月景真は彼女の明るい調子に、つられて微笑んでしまった。「急がなくても大丈夫だよ。入札会は10時からだから、まだ時間はある」和泉夕子は時計を見た。まだ朝の7時。こんなに早く目が覚めたのは、あの夢のせいだろうか? 彼女の顔はまた赤くなり、その夢を思い出すと、すぐに「はい」と返事をして電話を切った。昨夜は疲れてすぐに眠りに落ちてしまったので、彼女はまだ沙耶香からのメッセージを確認していなかった。急いでスマートフォンを手に取り、沙耶香から送られてきた風景写真やビデオを見返した後、返信を送った。それから彼女はふと、仕事のグループチャットに押し流されていた「夜さん」のアイコンに目を移した。そのアイコンは真っ白な背景に、彼の存在を象徴するかのように神秘的だった。メッセージを開くと、やはり最後の返信は彼女からのもので止まっていた。あの日、彼が何度も何度も電話をかけてきたのに、彼女が返信した途端、彼は全く連絡をしてこなくなった。どうしてだろ
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