男は冷たい目でアルバムを受け取り、最初からページをめくり始めた。 あの夜の男との対決を思い出す。彼の動きは自分とほぼ同等で、マスクをしていたが、目元に見覚えがあった。隼人は彼に会ったことがあると確信していた。隼人も軍事学校出身であり、調査や観察能力は高い。写真に写っている学生たちの顔を手で覆い、記憶と照らし合わせながら一枚一枚確認していく。 どれくらい時間が経ったか分からないが、突然隼人が勢いよく立ち上がり、その鋭い目に井上は一瞬怯んだ。「隼人社長、何か見つけたんですか?」「なるほど......あいつか?」 写真の中の男は、精悍な軍服に身を包み、剣のように鋭い眉と星のような目を持つ。顔立ちは凛々しく、堂々としている。 その下には名前が書かれていた――白沢檎。「白沢小春......白沢檎......だから彼が彼女を『妹』と呼んでいたのか......なるほどな!」 隼人は檎のことをよく覚えていた。軍事学校時代、二人は「犬猿の仲」と呼ばれるほどのライバル関係で、隼人と対等に渡り合える唯一の存在だった。 卒業後、皆それぞれの道を歩み、檎の消息は途絶えた。隼人の目は輝き、犯人の正体を突き止めたという興奮よりも、小春の過去の謎が徐々に解けていくことに対する期待感のほうが大きかった。 ただ、檎に関しては、軍事学校の生徒データは極秘扱いだったため、詳しいことは知らない。それでも、小春の兄で、余計な男ではないことに少し心が軽くなった。その時、ドアの外でノックの音がした。 井上が慌ててドアを開けると、瞬間的に固まった。「こんにちは、井上さん」 ドアの向こうには、翔太が高級な見舞い品を手に持ち、礼儀正しく微笑んで立っていた。「白沢様の命を受けて、隼人社長のお見舞いに参りました。社長はご回復されましたか?」「入れ」隼人は冷たい声で応じた。 井上は仕方なく舌打ちしながら道を譲った。翔太は背筋を伸ばし、優雅に部屋へ入ると、手に持っていた物をテーブルに置き、皮肉な笑みを浮かべながら言った。「さすがは白沢様のお見立て通り、隼人社長はもう退院できる状態のようですね」「お前一人か?」隼人は無愛想に外を見やり、誰かを探しているかのようだった。 彼は無意識に、あの柔らかなシルエットが見えることを期待していたのだ。「白沢様は高城社長のホテル
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