客をもてなしてから、亜矢子は桜子を彼女のアトリエに連れて行った。 先生と弟子の二人は、まるで姉妹のように仲が良く、二人きりになるとすぐに笑い合い、温かく楽しい雰囲気が広がった。 亜矢子は、自慢の高級茶を取り出し、桜子に振る舞った。さらに、国内のトップパティシエが作ったという特製のお菓子も用意した。これらは、下の階にいる他の客がいくら望んでも手に入らない贅沢なものだった。「先生にお茶を捧げます!」 「うん、明前茶だね。黄金に匹敵する価値がある。色は鮮やかで、香りは幽玄、味はまろやかで、形も美しい。なかなかのものだね」 桜子は微笑みながら、優雅にお茶を味わった。白い葱のように細長い美しい手で茶碗の蓋を持ち、浮いた茶葉をそっと撥ねのける。その仕草からは貴族の娘としての上品な育ちがにじみ出ていた。それは数世代にわたって培われた品格で、他人が真似できるものではなかった。「先生に気に入ってもらえるなんて、この茶も幸せですよ!」亜矢子はへへっと笑った。 普段はクールで美しい大人の女性の亜矢子だが、桜子の前ではまるで子供のように無邪気な一面を見せていた。彼女たちの出会いは、6年前に遡る。 当時の亜矢子は、服飾デザインの才能に恵まれ、溢れるインスピレーションで数々の作品を生み出していた。しかし、若くして頭角を現した彼女は、早くも多くの嫉妬を集め、厳しい状況に立たされていた。 仕方なく彼女は、ある有名人向けのデザインコンテスト番組に参加しチャンスを掴もうとしたが、そこで大物女優に恥をかかされ、さらに「尊敬される」審査員たちから無価値な存在のように酷評されてしまった。 その後、世界的に有名な天才デザイナーSharonがインターネット上で彼女を擁護し、番組内の悪意ある人物たちを激しく批判した。彼らの狭量で醜い本性を暴露したのだ。Sharonが声を上げたことで、同じような苦しみを味わっていた他のデザイナーたちも次々と名乗り出て、デザイン界の不公平さや暗部を糾弾した。それにより、亜矢子は一躍注目を浴び、その優れた才能が世に知られることとなった。「木が森の中で際立つように、風はそれを打ちのめそうとする。しかし、それに屈することなく、冬の厳しさにも耐え、堂々と咲き誇る。亜矢子さん、あなたの才能には心から驚かされました。自分を卑下せ
Last Updated : 2024-11-01 Read more