ホテルの上階の一室では、下の階での結婚式のライブ映像が流れていた。牧野は驚いて言った。「この夏目景之、どうしてまた唯の息子になってるんだ?」啓司は桃洲市に来てからずっと、紗枝を見守るように部下に指示していた。彼は牧野にこう説明していた。「これは尾行じゃない、保護だ」だから、結婚式会場の様子を、ボディーガードたちがビデオで録画しており、音声もクリアだった。牧野の言葉を聞いた啓司は、全く驚くことなかった。二人は親友だから。息子を借りるくらい普通だ。では、「パパ」については?桃洲市で最も権力を持つ男は、そろそろ自分が出番を迎えるべきなのか?でも、自分は今目が見えない......それに息子を貸すのはいいが、夫を貸すことなんてあり得ない。彼は他の女性の夫になるつもりなんて全くなかった。啓司は牧野に命じた。「下に行って、この件を片付けてこい」紗枝の友人は、自分の友人も同然だ。友人が侮辱されるなんて許せない。「かしこまりました」実言は弁護士だとしても、お金でどうにかならないことなどない。結婚式会場。新郎側と新婦側の出席者たちが入口付近の騒ぎに気付き、次々と興味津々で様子を見った。実言は驚きながらも母を助け起こした。花城母は唯にこんな歳の息子がいるとは想像もしておらず、すぐに不満げな態度を取った。二人が付き合っている時から、自分の息子はようやく結婚するのに、唯は既に子供を産んでいたなんて!彼女は覚えている。前回会ったのは去年の年末のことで、目の前の子供は4歳くらいに見える。つまり唯は既に子供がいる状態で、自分の息子を追いかけ回していたというのか?「桃洲市で最もお金持ちで権力がある男だなんて、そんなの嘘でしょ」花城母は言い放った。そして景之を指差して続けた。「あなたのパパがあなたを捨てたんじゃないの?だからあなたのママは私の息子にしがみついてるんでしょ。言っとくけど、私の息子はあんたのパパ代わりなんて絶対しないから!」花城母の言葉はどれほど耳障りで不愉快なものだったか、言葉に尽くし難いほどだ。景之は少し焦りながら、ママと花城母が対立している間、自分が雇った「イケメン」に電話をかけていた。相手は「すぐに到着する」と言ったが、なかなか姿を現さない。その時、牧野はすでに会場に到着し、花城母の発言
Last Updated : 2024-11-29 Read more