深夜、周りは静まり返っていて、人影すら見当たらない。タクシーなんて、全然ない。あの変な電話を思い出すと、里香は不安に襲われた。里香はバッグのストラップをしっかり握りしめ、「もうすぐ離婚するのに、あなたの家に住むのはちょっと不適切じゃない?」と言った。「私たち、もう離婚したのか?」雅之は里香を見つめた。里香は「まだだけど」と答えた。雅之は「じゃあ、何をためらってるんだ?俺に手を出すのが怖いのか?」と言った。里香は雅之を疑うような目で見た。「はは、ほんとに自己中ね!」そう言って、里香は雅之の車に向かって歩き出した。雅之に手を出すなんて、絶対にあり得ない!雅之は里香の背中を見ながら、口元が少しだけほころんだ。二宮家の別荘。執事は雅之が帰ることを知っていて、別荘の庭は明るく照らされていた。里香が中に入ると、執事を見かけ、ふと何か思い出して疑問を口にした。「ずっとここにいたの?」執事は頷こうとしたが、すぐに雅之の視線に気づき、急いで言った。「もうすぐ帰ります。坊ちゃんが帰ってくるのを知って、ここで待ってました」雅之は執事を見て、「では、先に失礼致します」と言った。「うん、帰り道に気をつけて」雅之が言った。執事は振り返って去って行った。里香は執事の背中を疑わしげに見つめた。本当にそうなの?でも、なんだか変な感じがする…雅之が「疲れてないのか?」と聞いた。里香は視線を戻し、まばたきしながら「私はどこで寝るの?」と尋ねた。雅之は「ここには部屋がたくさんあるから、好きな部屋を選んでいい」と答えた。里香は頷いて、部屋を見ようと思って、ドアを開けようとしたら、鍵がかかっていることに気づいた。別のドアを開けようとしても、やっぱり鍵がかかっていた。どういうこと?こんなにたくさんの部屋があるのに、一つも開かないなんてどういうことだ?里香は雅之の方を振り返ると、雅之はもう主寝室に向かっていた。「ねえ!」里香は雅之を呼んだが、雅之は止まる気配がなかった。里香は急いで追いかけて、雅之を止めた。「私の話を聞いたの?」雅之は淡々と里香を見つめ、「俺にはちゃんとした名前があるけど」と言った。里香は一瞬黙り込み、「どうして部屋のドアが全部開かないの?」と尋ねた。雅之は「俺も
最終更新日 : 2024-09-03 続きを読む