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第72話

布がゆるく垂れ下がってて、動くたびにひらひらして、雅之のしっかりした筋肉のラインが見えた。

里香の目には、雅之のくっきりとした腹筋が入ってきた。

心臓が少し早くなり始めた。

雅之は里香の目の前に立ち、少し身をかがめて、鋭い顔を里香に向け、「見てなかったのか?」と微笑んだ。

里香の顔は真っ赤になったが、すぐに何かを思い出したように、顔の赤みと照れが一瞬で消えた。

「だからどうしたの?まだ離婚してないし、妻が夫の体を見るのも普通でしょ?それどころか、触るのよ!」

そう言って、里香は雅之の腹筋に手を伸ばした。

ふむ…手触りが本当にいい!

雅之の表情が一瞬固まり、里香の冷たくて柔らかい手に触れられ、筋肉が無意識に少し引き締まった。

里香は得意げに微笑み、「もう遅いから、寝よう」と言った。

手を引こうとしたが、雅之に手首を掴まれ、そのままソファに押し倒された。

「何してるの?」と驚いて叫ぶと、雅之は「僕に触った君が悪い」と言った。

里香はまばたきし、「触ったからって、どうしたの?」と返すと、雅之はじっと見つめて、「ただで済むと思うなよ?」と囁いた。

何がしたい?里香は疑問の色を浮かべた。

雅之は少しずつ近づき、体重が里香にかかっていった。

「里香ちゃん…」雅之が名前をささやくと、その吐息が里香の顔にかかった。

雰囲気が甘く、曖昧になっていく。まるで制御できない方向に進んでいるようだった。

その時、雅之の携帯が鳴り響き、鋭い音が一瞬で甘い雰囲気を壊した。

里香は雅之を押しのけ、「電話が鳴ってる」と言った。

雅之は目を暗くし、里香をじっと見つめた後、立ち上がって電話を取った。

「夏実ちゃん」雅之の声を聞いて、里香は思わず唇を噛んだ。

まるで冷水を浴びせられたかのように、里香は急に目が覚めた。

今の自分は何をしているの?

もし電話が鳴らなければ、次の展開は制御できないものになっていた。

続けてはいけない。これ以上劣情に溺れてはいけなかった。

しばらくして、雅之は電話を切り、その目には複雑な色が浮かび、ソファにいる里香を見た。

「ちょっと出かけてくる」

里香は一瞬固まり、雅之を見つめ、「今行かなきゃいけないの?」と尋ねた。

雅之は「夏実が怪我をしたんだ、行かなきゃ」と答えた。

その瞬間、心は何かに打ち砕かれたように痛み、里香は
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