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第80話

クソ、クソ、クソ!

里香は怒りで飛び跳ねていた。

世の中にこんなクソで恥知らずな男がいるなんて!

今まで後悔したことはなかったけど、雅之を拾ったことだけは本当に後悔していた。

里香は怒りで気を失いそうだった。

これで離婚できないなんて、どうすればいいの?

怒りを抱えて階段を駆け上がり、寝ることもできないほどだった。

空が少しずつ明るくなってきた。

朝日が昇るのを見ながら、里香は心の中が冷たく感じた。

前世で雅之に何かを借りていたのだろうか。

だから今生でこんな目に遭っていた。

雅之は夏実に借りがあるから、里香を危険にさらしたくないと思って、離婚しないで里香を他の人の標的にしていた。

でも、雅之は里香に対して何も借りがないのか?

里香が雅之を拾って面倒を見てきたのに!

もし里香がいなければ、記憶を失った雅之はまるで白紙のようで、もう死んでいたかもしれない。

里香は自嘲して笑った。

本当に罪深い。

里香は二つのクマのような目を抱えて会社に到着し、すぐに退職届を提出した。

そして、マネージャーの顔色も気にせず、部屋に戻って荷物を整理し始めた。

この場所にはもう居られない。

里香は我慢できずに、雅之を刺し殺してしまうかもしれない。

退職届はすぐに雅之のデスクに届いた。

雅之の美しい顔は陰りを帯び、長い指で退職届を持ちながら、しばらくじっと見つめていた。

そして、すぐにそれを投げ捨て、「承認しない」と言った。

桜井は少し戸惑い、「社長、これは…」と言った。

「それと、以前に署名した小切手を凍結してくれ」と雅之は低い声で言った。

桜井は驚いて「どの小切手ですか?」と尋ねた。

雅之は桜井をじっと見つめた。

桜井は一瞬驚き、すぐに反応して、里香への6億の小切手のことだと気づいた。

本当に冷酷な男だ。

凍結すると言ったら、すぐに凍結するなんて。

里香はどうなるんだ?

桜井は振り返って手続きをしに行くが、ドアのところで「小松さんがきたら、どうしますか?」と尋ねた。

「好きにさせるがいい」

雅之は冷たく言った。

桜井は一瞬、何を言えばいいのかわからなかった。

退職届が承認されなかったことを知っても、里香は構わずに家に帰って荷物を整理し始めた。

このマンションはもう安全ではない。

里香はカエデビルに引っ越さな
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