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第81話

「もう考えても仕方ない、まずは引っ越そう」里香は他に方法を思いつかなかったので、考えるのをやめた。

かおるも頷いて、「ずっと憧れてた大きなマンションにやっと住めるんだから、それもいいことだよ」と言った。

里香は笑って応えた。

里香は洗面用具を詰めたバッグを背負い、かおると一緒にカエデビルへ向かった。

入口に着くと、警備員に止められ、登録をしないと入れなかった。

里香は安心した。少なくとも、あの男がここに入ることはできない。

雅之が里香に買ったのは31階の部屋で、エレベーターを降りると、目に入る玄関のドアは非常に豪華で洗練されていた。

里香は鍵を使ってドアを開け、中の景色を見て思わず目を輝かせた。

里香たちが中に入ると、すぐに警備員が桜井に電話をかけた。

「桜井さん、小松さんが来ました」

桜井は「はい、わかりました」と答えた。

電話を切ると、桜井はこのことを雅之に伝えた。

「うん」

雅之は淡々とした表情で、特に反応はなかった。

桜井は少し躊躇い、「社長、小切手は凍結されているので、マンションを回収しますか?」と尋ねた。

雅之は目を上げ、暗い目で彼を一瞥した。

桜井は不思議な寒気を感じた。

彼は何か間違ったことを言ったのだろうか?

何を間違ったのか?

小切手を凍結するのは社長の命令ではなかったのか?

自分はただ社長の思考に沿って考えただけなのに、何がいけなかったのか?

「えっと、私は用事があるので、先に失礼します」

桜井は急いで振り返り、オフィスを出ると、その寒気は次第に収まった。

かおるはそのまま本革のソファに座り、心地よくため息をついた。「これが金持ちの生活なんだね」

里香は「かおるさん、あなたもお金持ちよ」と言った。

かおるは手を振り、「私のお金なんて大したことないよ」と返した。

里香は口角を引きつらせたが、特に何も言わなかった。

部屋は既にリフォーム済みで、引っ越す際には生活用品を準備するだけでよかった。

雅之は人柄はともかく、センスは悪くない。少なくとも、この部屋は里香が気に入っていた!

里香はすぐに決めた。買い物に出かけよう。今は何億の資産があるのだから、以前のものは捨てることにしよう!

「さあ、まず小切手を換えに行こう」

里香は嬉しそうに言った。

かおるは頷いて、「里香ちゃん、私は洗濯や
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