しかし、自分は月宮の何者でもなかった。車が停まると、里香の瞳にあった輝きが少しずつ消えていった。「かおる、彼のこと好きなの?」里香が小さな声で尋ねた。かおるは、「好きじゃない」と答えた。月宮に狙われた回数が多すぎて、もう数えきれない。たまたま何回か関係を持っただけで、どうして好きになれるだろうか。里香は短く返事をし、そのまま車のドアを開けて降りた。「里香ちゃん、何をする気なの?」かおるはそれを見て、慌てて後を追い車から降りた。その時、前後が数台の車に囲まれ、明るい車のライトがその小さな空間を照らしていた。月宮が車のドアを勢いよく閉めると、里香の車から降りてきたかおるに目を留め、笑みを浮かべた。彼は大股でこちらに向かってくる。周囲には危険な雰囲気が漂っていた。里香はかおるを自分の背後に引き寄せ、静かな目で月宮を見つめた。「月宮さん、一体何のご用ですか?」月宮は白いシャツを着ていて、襟元は開いている。体には酒の匂いが染み付いており、明らかにバーか酒席から来た様子だった。彼の身からはだらしないが独特の魅力が漂っており、口元の笑みはどこか無頓着さを帯びていた。「かおるに会いに来た」月宮は手を上げ、里香の後ろに隠れるかおるを指さした。里香は言った。「お二人はあまり親しくないように思えますけど、こんな夜中に大げさに来た理由は何ですか?」「親しくない?」月宮は首を傾け、かおるに目を向けた。「お前から彼女に教えてやれ、俺たち親しいのかどうか」かおるはもう逃げ切れないことを悟り、里香の背後から歩み出て、平然とした表情で月宮に向かって言った。「お前、もしかして本気になったんじゃないでしょうね?」「何だと?」月宮は自分の耳を疑った。こんな状況で、まだ彼女がこんなことを言うなんて。かおるはさらに続けた。「ただ数回遊んだだけじゃない。なんでそんなにしつこく追いかけてくるの?私がお金を払わなかったから?」月宮の顔に浮かんでいた笑みが、さらに危険な色を帯びた。「かおる、今何て言った?」かおるは眉を上げた。「どうやらしつこいだけじゃなく、耳も悪いみたいね。病院に行って専門医に診てもらうことをお勧めするわ」「いいだろう!」月宮はとうとう理解した。かおるは本気で自分を恐れていないらしい。それどころか、挑発してく
最終更新日 : 2024-12-01 続きを読む