「何ですって、やめるの?」小栗先生は、綿から渡された辞表を見て、驚きを隠せなかった。ちょうどその時、須田先生が仕事の報告に来たが、綿が辞めるという話を聞いて、彼女も少し驚いた様子だった。特に問題もなく順調だったはずなのに、どうして急に辞職なんて?「ええ、小栗主任、私は辞めたいと思っています」綿は静かに答えた。小栗先生は眉をひそめ、辞表を手にとって、じっと見つめながら複雑な表情を浮かべていた。辞職の理由については何も記されておらず、ただ、もう病院にいたくないという気持ちだけが伝わってきた。「本当にそれでいいの?」小栗先生は念を押すように、何度も確認した。綿は、何度も頷いた。小栗先生はしばらく黙り込んだ。綿は、辞職が承認されることを望んでいた。一方で、須田先生は眉をひそめ、何か言いたげだったが、結局何も言わずにその場を離れていった。小栗先生は綿に、一旦外に出るように言い、院長と相談する必要があると告げた。綿はそのまま須田先生を追いかけた。須田先生は立ち止まり、階段の安全通路で二人は顔を向き合わせた。「私のせいなの?」須田先生はため息をつきながら言った。「須田先生、何をおっしゃってるの?」綿は微笑みながら、彼女の美しさがさらに際立っていた。須田先生はその姿に少し圧倒された。綿は本当に美しい。それも、ただの美しさではなく、際立った個性と鋭さを持っている。その美しさに多くの人が心を揺さぶられるだろう。「最近、科内で話題になってるんだけど、小栗主任があなたにポストを譲るつもりなんじゃないかって噂されてるの」須田先生は壁にもたれかかり、淡々と語った。綿は、須田先生に安定感を感じた。年齢もあるし、母親でもある彼女は、何をしても落ち着いていて、冷静さが感じられた。「そうじゃないよ。私はただ、この仕事が合ってないと思っただけ。もともと病院に入ったのは、祖母の希望だったんだから」綿は軽く笑いながら続けた。「私は桜井綿、桜家の長女よ。こんな仕事をする必要なんてないの」須田先生は少し驚いたように眉を上げた。綿は真剣に頷いた。「本当よ。お金には困ってないし、正直、人の世話をするのは面倒なんだから」須田先生は何も言わなかった。「須田先生、これからもお元気で」綿は彼女にそう言った。須田先生は何も返さ
最終更新日 : 2024-11-27 続きを読む