さくらの表情が明るくなった。「見つかったの?どこで?」山田は膝に手をつき、大きく息を吐きながら答えた。「三途橋です。急いでください。飛び降りようとしています。私どもでは説得できず、強引な救助も危険です。美奈子さんは上原殿にしかお会いになりたくないとおっしゃって......風が強くて、もう立っているのも危うい状態です」「えっ?」北條守は驚愕の表情を浮かべ、呆然と尋ねた。「なぜ飛び降りなどと......」さくらは即座に走り出し、大声で叫んだ。「馬を!」三途橋は京の西北に位置し、その下には荒々しい流れの玄水川が流れている。この辺りの玄水川は、上流が広く下流が狭い地形に加え、急な傾斜があるため、水流が特に激しい。三途橋から落ちれば、生還はほぼ不可能とされていた。元々は第二玄水橋と呼ばれていたが、そうした事情から、人々の間では玄水橋の別名として「三途橋」とも呼ばれるようになっていた。北條守は一瞬の戸惑いの後、山田に将軍家へ兄上への報告を頼み、自身も馬を走らせて三途橋へと向かった。紫乃はすでに現場へ向かっていた。道中で山田と出くわし、美奈子が三途橋で発見され、投身を図ろうとしているという話を聞いていたのだ。紫乃が三途橋に到着した時、太陽はちょうど沈みかけ、空の端には橙色の名残りだけが残されていた。夕暮れ時の三途橋は格別な美しさを湛えるものだった。寒風に吹かれる孤独な橋と、轟々と流れる川の風景。だが、今は橋の上で今にも落ちそうな人影が揺れており、その美しさなど微塵も感じられず、ただ背筋の凍る光景が広がっていた紫乃は現場を目にした瞬間、血の気が引いた。美奈子の立っている場所があまりにも危険だったのだ。欄干の支柱の上という、両足を置くのがやっとという狭い場所に立っていた。強風が吹き荒れ、美奈子は正気を失いかけているようだった。身体を震わせ、よろめきながら、着ていた袿袴が風にはためき、今にも転落しそうな様子だった。三途橋の両側から人々は退けられていたものの、遠巻きに大勢の見物人が集まっていた。数名の禁衛府の役人たちが降りてくるよう呼びかけていたが、近づくことができずにいた。声が嗄れているところを見ると、かなりの時間説得を続けていたのだろう。「近寄らないで!」美奈子は紫乃の姿を認めるや否や、彼女が駆け寄ろうとする素振りを見せた途
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