親房夕美はこれまで、どんな大きな過ちを犯しても、必ず責任逃れをし、自分は無実だと言い張るか、やむを得なかったと言い訳をしてきた。しかし今回ばかりは、三姫子の言葉に反論せず、ただ止めどなく流れる涙を拭うばかりであった。三姫子は彼女を見つめながら、ため息をついた。この将軍家では、北條正樹はすでに官位を失い、妻も亡くなり、一日中部屋に引きこもったきりだ。北條森は才覚のない男で、武芸も学問もものにならず、期待などできなかった。次男家は関与しないと言い切り、本当に手を引いてしまい、むしろ塀を築き始め、将軍家を二分しようとしていた。結局、北條守だけが頼りになった。特別訓練の合間を縫って家に戻り、夕美の世話をし、家政の采配を取る。帳簿を確認してみれば、将軍家が本当に極貧状態であることが分かった。二時間ほど経った頃、孫橋ばあやが二百両を三姫子の元へ急いで届けに来た。息を切らし、足取りも慌ただしく、明らかに屋敷外から駆けつけてきた様子であった。三姫子はお紅からいろいろと事情を聞いた。美奈子が老夫人に装飾品を質に入れるよう頼んだものの、老夫人は断固として拒否し、そのことで美奈子を叱責したという。しかし今や自身の病の治療費用のため、老夫人は仕方なく装飾品を質入れすることにしたのだ。三姫子は足を運ぶことにしたものの、実のところ徒労に終わるとわかっていた。そのため、証人として孫橋ばあやを連れて行き、彼女には頭巾を被らせることにした。薬王堂に着くと、雪心丸を求めて身分を明かした。初めての来客ということで、医師が応対に出てきた。「お宅様のどなたが心の症でお困りなのでしょうか?雪心丸は丹治先生が直々に診察し、処方せねばなりません。西平大名夫人様、しばらくお待ちいただければ、丹治先生をお呼びして、西平大名邸まで同行させていただきますが」三姫子は言った。「まあ、そこまでご面倒なのですか?診察の結果、心の症でないと雪心丸はお買い求めできないということでしょうか?」「はい、その通りでございます。雪心丸は数に限りがございまして、本当に必要とされる方にお渡しするため、このような手順を取らせていただいております」当直の医師はそう答えた。三姫子は頷いて、「分かりました。では改めて日を改めて参りますわ」礼を言って孫橋ばあやと共に薬王堂を後にした。だが、店の丁稚
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