万華宗の境内で、深水青葉は手紙を持って皆無幹心を探し当てた。「師叔様、影森師弟からの手紙です。京の都へ来てほしいとのこと。何か私にお力添えを願いたいそうです」皆無幹心をは目を閉じたまま座禅を組み、何も答えなかった。皆無幹心をはずっと怒っていた。今もなお怒りが収まらず、誰とも口を利きたくなかったし、誰も山を下りることを許すつもりもなかった。そのため、普段から山を出歩いていた者たちも皆ここに足止めされていた。外出したまま戻ってこない者たちも、水無月清湖のように、あえて帰ってこようとはしなかった。皆無幹心をが邪馬台へ向かう前、何度も厳しく言い渡していた。北の山に家を建ててはならない、と。あの場所には計画があったのだ。五層楼の高楼を建てる予定で、高みから月を眺めることも、武芸の修練もできる。特に軽身功の上達には大いに役立つはずだった。さらに重要な、別の理由もあった。来年の春に工事を始めるつもりだったのに、戻ってみれば彼らはせっかちにも北の山に家を建ててしまっていた。北の山は地勢が高く、向かいには滝がある。あそこに家を建てるというのは、つまるところ彼らが住みたがっているだけだ。ただ美しい景色を楽しみたいだけなのだ。どいつもこいつも大した志もないくせに、享楽ばかりが先立っている。怒らずにいられようか。怒らないはずがない。今や、あてにならない菅原師兄は、外部には修行中と言い張り、姿を見せようとしない。逃げるがいい、どこまでも逃げるがいい。しかし私は根に持つ。一生忘れはしない。この件は決着がついていない。来年までに高楼が建たなければ、決して許すまい。沈青葉は皆無幹心の沈黙を見て、おそるおそる再度強調した。「師叔様、影森師弟からの手紙なのです。こんなに急ぐからには、きっと重要な用件があるのでしょう。様子を見てまいります。用事が済み次第、すぐに戻ってまいります」皆無幹心は応対したくなかったが、影森玄武の件と聞いて、かすかに聞こえるか聞こえないかの声で「うむ」と返事をした。深水青葉には分かっていた。この微かな返事が、師叔の最大の譲歩だということを。影森師弟の件でなければ、「出ていけ」と一蹴されていたはずだった。彼は慌てて礼を言った。「ただちに下山いたします。何かございましたら、また手紙でお知らせいたします。大事がなければ、用事を済ませて
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