しかし、刑部に入った人間を簡単に救い出せるものだろうか。太夫人の断食は、世間に承恩伯爵家の不孝を知らしめることになる。そのため、成功の見込みは薄いと分かっていても、彼らは至る所で人脈を頼み、天皇に直接嘆願しようと奔走した。承恩伯爵にもいくばくかの人脈があった。蘭姫君が梁田孝浩を許し、許免してくれれば、梁田孝浩を釈放できる可能性があると聞いていた。しかし、誰が姫君に近づく勇気があろうか。恥ずかしさもあり、恐れもあった。何しろ、北冥親王妃がそこにいるのだ。最終的に、承恩伯爵は淡嶋親王に助けを求めた。刑部の役人が梁田孝浩を逮捕した際、承恩伯爵が助言を申し出た。その様子からすると、親王はまだ姫君と梁田孝浩の離縁を望んでいないようであった。そのため、親王夫婦に姫君を説得してもらうほかなかった。淡嶋親王は承諾したが、実際に動くかどうかは、承恩伯爵家の者たちにも分からなかった。淡嶋親王妃はずっと蘭に会いたいと思っていた。今や、離縁の勅令は下り、もはや覆すすべはない。そのため、蘭を家に連れ戻そうと考えていた。しかし、彼女が人を連れて行こうとしたその時、上原さくらが福田と木下ばあやを伴って訪れてきた。馬車には、かつて交換した贈り物を互いに返却するための荷物が山積みになっていた。馬車いっぱいの品々には、日用品から高価な品まで様々なものが積まれていた。それらの贈り物は、長年の姉妹のような絆の証であった。福田や木下ばあや、梅田ばあやの記憶によれば、母が淡嶋親王妃に贈った品々の中には、金銀財宝や日用品もあったが、とりわけ貴重な薬が多かった。それらは丹治先生が当時の北平侯爵家に処方したもので、主に外傷の治療用だった。父や兄が戦場にいる以上、多めに用意しておくに越したことはなかった。外傷薬の他にも、体調を整える薬や救急用の薬があり、特に心臓を守り体力を回復させる雪心丸や回転丹は相当な量があった。木下ばあやの話では、淡嶋親王妃は母に直接雪心丸を所望し、何本もの瓶を受け取ったという。この薬は長期保存が可能なものだったが、蘭が危篤状態の時、持ってこなかったのだ。さくらにはどうしても腑に落ちなかった。蘭は親王妃の実の娘なのだ。母親が我が子の生死を全く気にかけないなどということは、常識的に考えられない。危篤の知らせを受けた者なら、屋敷中から最高の薬を必死で探
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