All Chapters of 会社を辞めてから始まる社長との恋: Chapter 801 - Chapter 810

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第801話 目に見えている

「何でこんな時間に来たの?」紀美子が悟の前に来て尋ねた。「特に何もないけど、君はまだ寝てないと思って、今日買ったツバメの巣を届けにきた」「何でそんなものを買ったの?買わなくていいのに......」「これは華国から輸入してきた高級食材、体にいいらしい。君は最近顔色が悪いから、ちょっと栄養成分を補給すればいい」「お気遣いありがとう」紀美子は礼儀正しく礼を言った。「今度はもう買わないで」「私たちはこんなよそよそしい言い方をしなくてもいいじゃない」悟は優しい声で言った。紀美子は彼の横顔を眺めて、再び心の中に罪悪感が湧いてきた。2人の会話を聞いた晋太郎は、顔が曇ってきた。「私たち?」5年の間、彼らの関係はただの友人関係では終わらないはずだ。晋太郎は胸が塞がれたかのような気分になった。彼は手を伸ばして紀美子の肩に落とし、眉間に敵意が浮かんだ。「塚原先生は、自分の好意が俺の女にプレッシャーをかけることになると思っていないだろうな」紀美子は心の中で、「またか」と呆れた。悟の目線は晋太郎の手に落ち、そして穏やかな笑みを浮かべた。「森川社長、二人の関係をこんなに直接的に主張する必要はない」「私はあなたに負けないくらい紀美子との付き合いが長いから、友達としてお互いを気遣うのは当然のことだ」「お前の考えていることが全て顔に出ているから、俺が分からないわけがないだろ?」晋太郎はあざ笑いをしながら隠さずに言った。「まさか紀美子の人間関係まで干渉するつもりか?」悟は落ち着いた声で尋ねた。「彼女の人間関係には、俺は干渉しない」「だが彼女に何かを企むのなら、俺も黙って見るつもりはない」「森川社長、まさかたったツバメの巣くらいで紀美子の心を買収できるとでも?」悟の話には別の深い意味を秘めていた。彼は晋太郎に、紀美子が彼の中で、ちょっとしたプレゼントで動揺する人かと聞き返していた。晋太郎の手は明らかに力を加えていた。紀美子は横目で隣の男を見た。彼が口を開く前に、彼女は先行してこの気まずい雰囲気を打破しようとした。「悟さん、何か食べる?」紀美子は話題を変えた。「今日このツバメの巣を届けに来ただけ、お二人の休みの時間にお邪魔をして悪かった」「そんなことないわ、ちょうど私もお腹が空いたし
last updateLast Updated : 2024-12-30
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第802話 全くしたことがない?

「もし本当にそんなことをしたら、紀美子との関係がますます遠ざかっていくに違いない」悟が晋太郎に注意した。そう言われた晋太郎は、帯びていたオーラが一瞬で氷点下になった。「貴様をこっそり殺すなんて、俺にとって造作もない!紀美子が気づくことは一切ない!」「もし紀美子との関係が終わっても気にしないのなら、やってみるがいい」悟は軽く笑いながら言った。「貴様にとって、紀美子は自分の仕事よりも大事なのか?」晋太郎の目に冷たさが漂っていた。「そうだ」悟は躊躇わずに認めた。晋太郎はいきなり立ち上がり、悟の襟を掴んだ。彼は怒りを抑えながら悟を見つめた。「貴様、紀美子にちょっとでも変なマネをしてみろ、絶対にこの帝都から消し去ってやるから!」晋太郎の険しいオーラに覆われても、悟は依然として落ち着いていた。「ならばこれから、チャンスを与えないように、一歩も離さずに紀美子の傍にいることだな」と、悟が笑って挑発した。晋太郎の怒りが有頂天外になり、思わず拳を振るおうとした時、キッチンの方から大きなものが割れた音がした。晋太郎は慌ててキッチンの方を眺めた。彼は急に心が引き締まり、悟を離して急いでキッチンに向った。紀美子がしゃがんで茶碗の破片を拾っているのを見て、晋太郎はいきなり彼女を引っ張り上げた。「お前、指が切れてもいいのか?」怒りを発散できずにいた彼が、おもいきり紀美子に怒鳴った。いきなり怒られた紀美子が驚いた。「何でそんなに怒るの?ただ片付けているのに」「今後はこんなことは使用人たちに任せろ!」「桜舞は使用人なんかじゃないわ、もうその言い方をやめて」「ならば使用人を雇え!」紀美子は呆れてそれ以上彼と揉め事をしたくなかった。「でも今、この破片をどうにかしないとダメでしょ?」「まさか、明日使用人が来るまで放置するの?」「俺がやる!」晋太郎は周りを見渡し、入り口に置いていた箒を取りに行った。そして戻ってきた彼は、床の破片を片付け始めた。掃除下手な男を見て、紀美子は思わず笑った。「あんた、ひょっとして家事が久しぶりなの?」「あるいは、全くしたことがない?」「ただ鈍っていただけ!」晋太郎が意地を張った。「はいはい、ではお掃除を頼んだわ」「私は麺をゆでてくるから」
last updateLast Updated : 2024-12-30
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第803話 彼に償いたかった

紀美子は、足で朔也を蹴って合図をした。晋太郎が隣にいるから少し空気を読めと注意してやりたかった。ただでさえ晋太郎はまだ先ほどの件で怒っているのに。「ちょっ、何で蹴ってんだよ?」気の利かない朔也は紀美子に聞いた。困った紀美子は、こっそりと隣で顔が曇り切った晋太郎を覗いた。「何でもない、足を延ばしたらたまたま当たっちゃって」紀美子はもう疲れて呆れた。「そか」夜食を食べた後、悟は帰り、朔也は満腹で部屋に戻った。紀美子と晋太郎が再び寝室に戻ったが、晋太郎は紀美子を構わずに一人でベッドで横になった。「何か機嫌が斜めじゃない?悟さんがものを持ってきたから?」紀美子が尋ねてみた。「何でもない!」晋太郎は目をつむったまま誤魔化して返事した。「もう彼には今後こういうのやめてって伝えたよ」しかし晋太郎は口を閉じて何も返事しなかった。「もう、変な誤解はやめて、私も今度また悟さんに注意してあげるから」紀美子は続けて説明した。「また1人であいつに会うつもりか?」晋太郎が不満そうに口を開いた。「そう言う意味じゃない」「電話で言えばいいじゃない」「悟さんにはこれまでお世話になってたし、あまり冷たくするのも失礼だから」「そういうのを聞きたくない!」晋太郎の機嫌が更に悪くなった。「彼と一体どういう関係だった?」「もう何度も説明したでしょ?」「ただの友達だって!」「ただの友達だと?」晋太郎はあざ笑いをした。「君は、彼と一緒になるのを考えてなかったのか?」紀美子は嘘をつきたくなかった。「考えたことはある」「でもそれは、彼に償いたかったから」「償い?自分の人生をかけて彼の好意に償うというのか?」「当時はそう考えていた、でもどうしても納得いかなかったから」「あんたは一体どうしたの?何で急にそんなことを聞くの?」「君のことが好きな男性なら、誰に対しても自分の体で償うのか?」晋太郎はますます怒ってきた。「誰にでもここまですることはないよ!」「なるほど、彼が特別だな?そうだろうな?」晋太郎の額に青筋を立てた。「もういい加減にしなさいよ!」紀美子も流石に我慢できなくなった。「あいつと曖昧な関係を持っていたのを思い出すたび、怒りが抑えられなくなるんだよ!」
last updateLast Updated : 2024-12-30
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第804話 冷静でいられるか?

晋太郎は棚からワインを出して、一杯注いでから一気に飲み干した。晴は自分でもう一本ワインを取って、コップに注いで軽く一口飲んだ。「飲まないなら帰れ!」晋太郎が不満に晴に言った。「俺に怒りをぶつけるなよ!」晴も頭にきた。「佳世子が酒に飢えているから、俺だけ酔っぱらって帰ったら怒られる!」晋太郎は酒を持ってソファに座り、一杯また一杯と立て続けに飲み干して言った。「で、またどうしたんだ?聞いても教えてくれないし」晴がため息をして尋ねた。「あの塚原に、『大人の男女2人には、何が起こる』を聞かれた!」晋太郎は険しい目つきになった。「塚原悟?まさか彼と紀美子のことを言ってるのか」「じゃなきゃ何なんだ?」晋太郎は聞き返した。「悟があんなことをいうヤツじゃないと思うんだがな。何でいきなり聞いてきたんだ?あれはお前に考えさせようとしてるんだ」晋太郎は先ほどの出来事を晴に教えた。「そうか、どうりであんなことを言われた」「あんたが先に相手の気を障ったんだ」「俺が?あいつがずっと紀美子のことを思ってやがる!」「紀美子もあいつと一緒になるなんて思ってたんだぞ?」「それがどうした?彼らはあの頃独身だったし、しかも悟が紀美子に優しかったし、感動されるのも当たり前だろ?」「肝心なのは紀美子が今どう考えてることだ」「どう考えてるって?」晋太郎はイラついて聞き返した。「彼女は今俺のモノだ!」「そっちじゃねえ!」晴は説明した。「彼女があんたの方を選ぶことを、悟に教えたかどうかだよ」「結構分かりやすいじゃない?」「2人独身で、あんたも優秀だし、俺が女だったら結婚したいところだよ!」「あいつが俺より優秀だと?」「そりゃあ、あんたと比べりゃそうでもないけど、あいつがやさしいんだよな。「何かこう、紳士的?」「しかも顧みずに長年紀美子に尽くしてきたんだ」「そんなことができる男って、滅多にいないよ?」晋太郎は心の中のイラつきを抑えながら酒を飲み続けた。「紀美子は悟との関係について説明してくれた?」「うん」「何て説明した?」「ただの友達だと!」「それなら問題ないじゃないか?あんたがここでふくれっ面をすねてるけど、彼女も勘違いされて悔しく思ってる!」「こんなことがお前の身
last updateLast Updated : 2024-12-30
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第805話 出来損ない

翌日。森川家旧宅にて。次郎は父の貞則と一緒に朝食を食べていた。「次郎、今日からお前はもう会社に行かなくていい」「どうして?」次郎が眉を寄せて尋ねた。彼はここ数日、大金を使って建築材を調達し、遊園地が完成すれば晋太郎に打撃を与えると思っていた。そんな彼に手を引けだと?できるわけがない!彼は、まだ晋太郎が苦しんでいる顔が見れていない、このまま手を引いたら悔しすぎる!だが貞則は、息子を守る為に嘘をつかなければならなかった。「お前は会社の運営に多大な損失をもたらした」「会社の管理層が、お前に意見を持つ者が多い」「それだけの理由で俺に出社するなというのか?」次郎は信じられなかった。「遊園地が完成すれば、今の損失をすぐにでも補える!」「もう会社に行くなと言っておる!」貞則は怒ってきた。「何度言わせれば分かる?」「もしかして晋太郎のヤツが尋ねてきた?」「何であんたがこんなにも奴に脅かされてしまうんだよ!」「俺が奴に脅かされると?」「兎に角、お前はやるべき仕事に戻り、会社の方は他のヤツに任せるがいい!」「父さん、俺にもやらなければならないことがあるんだ!」「どうしても会社に行くなら、クビにされても知らんぞ?」貞則は本気で怒り、そして立ち上がってディナールームを出た。次郎は力いっぱいで拳を握った。晋太郎の奴が邪魔をしているに違いない!彼を除けば、他のヤツが思い当たらない!一旦このプロジェクトが止められたら、晋太郎の苦しんで狂えそうな面が見れなくなるじゃないか!晋太郎が苦しめられ心臓が狂いそうになり、それを見たら自分が気持ちよくて血が滾り出すような表情、彼は絶対見逃したくない!必ずや晋太郎に、自分の母が死んだシーンを繰返して思い出させる!ここまで考えると、次郎は立ち上がり、曇った顔で森川家を出てMK社に向った。午前9時、MK社にて。晋太郎が事務所に着いたばかりで、次郎が入ってきた。「晋、お前は一体何を恐れているのか?」「こんなにも急いで父さんに俺を会社から追い出すなんて!」次郎が蛇のような陰湿な目つきで尋ねた。次郎を見て、晋太郎の顔は凍るかのように冷たくなった。「出ていけ」「出ていくのはお前の方だろ?」次郎は晋太郎に怒鳴って
last updateLast Updated : 2024-12-31
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第806話 連名でお前をMKから追い出す

次郎は打ち倒され、晋太郎は立て続けに彼の顔を殴った。その勢いは、まるで次郎を殴り殺すかのようだった。秘書達は皆驚いて、秘書長が慌てて肇に電話をかけた。しかし中の次郎はまだ高笑いが止まらず、狂ったかのように叫び続けていた。「晋太郎、できるものなら俺を殺して見せろ!」「馬の骨が!お前はその母とも馬の骨だ!」「......」次郎が血塗れに殴られた頃、肇は駆け込んできた。肇は慌てて晋太郎を抑えて止めた。「晋様!もう止めてください!」「どけ!」晋太郎は血迷った目で肇を見て、冷たい声で怒鳴った。「晋様、ご冷静に!」「こいつはわざと言った、どうか落ち着いて!」「彼を殺したところで、何のメリットもありません!」肇は必死に晋太郎の腰を掴んで手を離そうとしなかった。晋太郎は漸く手を止め、瞳の中の怒りは肇の話で段々と苦しみへと変わった。彼は歯を食いしばり、鋭い目つきで半殺しにされた次郎を見つめた。「セキュリティにこいつを放り出させろ!」晋太郎は怒りを抑えながら命令した。「任せてください」「晋様、どうか落ち着いて!」晋太郎を離し、肇は直ちにセキュリティを呼んだ。そしてすぐ、意識不明になりかけた次郎が担ぎだされていった。10分も経たないうちに。そのことは貞則の耳に届いた。彼は慌てて病院に向かいながら晋太郎に電話をかけた。すぐ、電話が繋がった。「チクショー!」貞則は怒鳴った。「お前は一体どこまでやれば気が済む?」「次郎のことをバラされたくなければ、取引をしないか?」晋太郎は赤く腫れた手の甲を見て、冷たい声で言った。……30分後。貞則は晋太郎の事務所に現れた。「お前、自分が社長だから俺と株の相談ができると思うなよ!」「どうやら次郎はあんたにとって、そこまで重要でもなさそうだ」晋太郎はゆっくりと見上げて言った。「次郎のことで俺を抑えようとするな」「30%の株など、ふざけるな!」「欲張りにもほどがある!」「無理か」「ならば午後にでもMK社として記者会見を開こうか」「貴様、いい加減にしろ!」貞則は怒りで思わず体が震えた。「できるかどうか、見てみるがいい」晋太郎は貞則に警告した。「株主総会を開き、お前をMKから追い出す
last updateLast Updated : 2024-12-31
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第807話 塚原を調べてこい

「30%もの株なんて、寝言は寝てから言え!」貞則は椅子に腰を掛けた。「相談の余地もないなら、もうこれ以上話す必要はない」晋太郎は言った。「お前は一体どうしたい?」貞則は机を叩いた。「たとえお前を追い出しても、他のヤツをいくらでも育てられる!」「恐らく俺と同じ能力の人を育てたとしても、その頃にはMKは既に踏みつぶされていただろう」晋太郎はあざ笑いをした。「俺がMKを引き受けられないとでも思ってんのか?」「もう10年も会社にいないあんたなんて、どれだけ会社のことがわかるか?」「業界の動向、新商品の企画、開発、あんたには分かるのか?」貞則は言葉を詰まらせた。「次郎の名声がもたらした影響を含めて、MKがどこまでもつと思う?」問い詰められた貞則は、きつく拳を握ること以外、何も言い返せなかった。晋太郎にそう言われ、貞則はますます彼がMKに不可欠だと思ってきた。一旦彼を放したら、数年も経たないうちに、MKは絶対に飲み込まれるだろう。こう考えると、株どころか、自分の帝都での地位も奴に取って代わられるに違いない。しかし、自分が持っている株をヤツに譲渡すると、恐らく次郎はもう一生この会社を受け継げなくなる。その時、彼はもっと自分を眼中に置かないだろう。利害を目の前に、貞則は長らく沈黙した末、ようやく決心がついた。「分かった、30%の株をくれてやろう!」「だがもしお前が次郎に少しでも害をすれば、これらの株を全て撤回するからな!」「弁護士はもうすぐ来る、この場で株の譲渡を行おう」晋太郎は冷たく笑みを浮かべた。「お前、ずっと株のことを図っていたな!」「転ばぬ先の杖、あんたからの受け売りだ」昼頃。株譲渡の契約を結んだ貞則は、悔しくも一旦MKを離れるしかなかった。晋太郎は翔太に電話をかけようとした時、杉本肇が外から駆け込んできた。「晋様!A国から情報が届いています!」肇は慌てた声で報告した。「どうした?」「我々のファイアウォールが、昨夜また3重破られ、技術部はもう手に負えません。「副社長は、あなたが一度A国に重要な案件を疎開することを検討してきたらと勧めています」「出来損ない共が!」晋太郎の顔は凍てつくほど曇り切った。「腕の立つハッカーを探せ」「報酬
last updateLast Updated : 2024-12-31
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第808話 誰のこと?

紀美子は申し訳なそうに娘の顔を撫でた。「ごめん、お母さんはさっき考え事をした」「あの人のことを考えていたの?」ゆみは柔らかい声で尋ねた。「あの人って、誰のこと?」紀美子はわざと聞き返してみた。「あのクズおやじのことだろう」隣の佑樹が代わりに答えた。紀美子は朦朧として、晋太郎が出ていってから、既に二日が経っていた。最近彼からは電話どころか、メッセージ一通も来なかった。まるで自分と一生会わないかのようだった。「そんなことないわ、お母さんは他のことを考えていたの」紀美子はため息をついた。「お母さんのうそつき!」ゆみはくちをすぼめた。「最近家にいる時、ずっと携帯を手放さなかったんでしょ!」「......」自分はそんなに分かりやすかったの......?「お母さん、何であのクズおやじのことが好きなの?」佑樹も口を合わせて尋ねた。紀美子はその感情をどう子供達に説明すればいいか戸惑った。「あ、そうだ、天もうすぐ暖かくなるし、お母さんが服を作ってあげようか?」紀美子は話を逸らそうとした。佑樹は呆れて母を見た。「話を逸らすのはよくないよ、お母さん」「逸らしてないよ」紀美子は誤魔化そうとした。「お母さんはただ、もっとあなたたちに気を使いたかっただけ」そう言ったそばから、ゆみが小さな手で紀美子の顔をすくった。「お母さん、何でいつも眉を顰めてるの?」「もし本当にお父さんに会いたいのなら、メッセージを送ればいいじゃん」ゆみは母に勧めた。「いや、彼はきっと最近忙しいから、邪魔したくないの」紀美子は首を振って答えた。彼には、もう説明してあげた。信用してくれない男の機嫌など、取る必要はない。ゆみは清らかな瞳をくるっと回した。お母さんが連絡しないのなら、お父さんに連絡させればいい!後で家に戻ったらすぐお父さんにメッセージを送ろう!こんなにもたもたするなんて。全然可愛くない!病院に到着した。紀美子は子供達を検査に連れていった。楠子が子供に手を出していないと言っているが、紀美子はやはり不安だった。彼女は自分の目で確かめない限り、安心できなかった。30分後。紀美子は子供達の検査レポートを医者に渡した。「入江さん、もう安心してい
last updateLast Updated : 2024-12-31
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第809話 ウィルス検査を受けて

その時、飯を食べていた晋太郎はゆみからのメッセージが届いた。ゆみのメッセージを読んで、彼は思わず笑みを浮かべた。しかし最後まで読むと、晋太郎は戸惑った。男の子?自分はいつ男から「男の子」になった?「俺に何を言ってほしい?」「何でもいいよ」「ゆみ、お母さんって、悟さんと仲が良かったのか?」晋太郎は暫く考えてからメッセージを返信した。ゆみは賢く、メッセージを読んだらすぐにきづいた。父は自分の話を誘い出そうとしている。「そうだよ、悟お父さんはお母さんにお世話をしていて、お母さんも悟お父さんにお世話をしているの」「お世話以外、他に何かあったのか?」お父さんは何故そんなことを聞いてるの?ゆみは暫く考えた。もしかしてお母さんと悟お父さんのやきもちをしてるの?彼女は、「やきもち」ということが分かっていた。しかも、やきもちをすればするほど、その人のことが好きだという。それは朔也おじさんが教えてくれたのだ。なら、お父さんに一杯やきもちをさせなきゃ!そうすれば、きっともっとお母さんのことが好きになってくれる!「もしかして、ゆみが見えないとところで、2人が手を繋いだり、抱っこをしたりするかもしれない?」「だってお母さんが食べ物がのどに詰まったら、悟お父さんはとても心配してたんだもん!」ゆみは電話のこたらで微笑みながら返信した。だが、向こうの晋太郎はその話で顔が真っ黒に曇った。手を繋ぐ?抱っこする?その文字が深く彼の心に刺さった。自分の女が他の男とあんなことをしていたと思うと、彼はまるで胸が塞がれたかのように息が詰まった。「分かった!」晋太郎はイラついて返信をした。「忘れずにお母さんの機嫌を取ってあげてね!」30分後。紀美子は佳世子の家の近くまできた。佳世子が怠そうに出てきて、紀美子の車に乗った。彼女の顔が少し赤く染まっているのを見て、紀美子は手を伸ばして確認した。暫く触ってみたら、紀美子は思わず眉を寄せた。「もしかして熱が出てるの?」「分からないよ、何だか頭が重くって」佳世子は力が抜けた声で答えた。「早く、病院へ!」紀美子は運転手に指示した。途中で、佳世子はずっと紀美子の肩に寄り添い、病院まで昏睡していた。病院に入り、
last updateLast Updated : 2025-01-01
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第810話 気が済まない?

「もう、何処に行ってたんだよ?」晴は焦った声で尋ねた。「俺が家に帰ったら君がいなくて、何で出かけるのを言ってくれなかった?」「昨日言うのを忘れてたけど、今日は健診の日、紀美子を呼んで一緒にきた」「そか、分かった、後で迎えにいく」「ううん、大丈夫。これから紀美子とちょっとぶらぶらして帰るから」紀美子は不思議に佳世子を見た。「そろそろきるね、もうすぐ検査が始まるから」佳世子は晴にそういいながら、紀美子に目で合図を送った。「分かった、気をつけてね、俺は家で待ってる」「うん」「何で熱が出たことを教えてあげなかったの?」紀美子は尋ねた。「いいのよ。最近彼は神経を尖らせすぎてるの。何でも教えてあげたら、無駄に心配するから余計疲れるし」佳世子は腹を撫でながら、目に優しさが浮かんだ。「この子は将来、きっと晴みたいに優しくて責任のある人になれる」紀美子は手を佳世子の腹に当てながら言った。「ねえ、紀美子。もし女の子だったら、名前を何にする?男の子は?」佳世子は笑いながら意見を求めた。「まだまだ早いよ。それに、名前は晴に決めてもらわなきゃ」「彼はね、女の子だったら『美世』、男の子だったら『浦正』にすると言ってたのよ」佳世子はがっかりした顔で言った。「はっ?時代劇にも出てきそうな名前じゃん!」紀美子も思わずツッコミを入れた。「だからさ、子供の名前について彼と相談するのは間違ってるのよ!絶対嫌だ!」検査室の前にて。紀美子は朝一度きて、そして今また来た検査室を見て、少し変な気分になった。しかし何処が変なのかは自分もよく分からず、ただ不安が募るだけだった。佳世子が検査室に入り、紀美子はベンチに座って待っていた。20分経っても佳世子は出てこなかった。この時、彼女の携帯が鳴り出してきた。晋太郎からの電話だった。彼の怒りは鎮まったのか?紀美子は眉を寄せた。廊下の突き当りに行き、彼女は通話ボタンを押した。「もしもし?」「今どこだ?」晋太郎は尋ねた。「病院。佳世子の健診に付き合ってる」「君、ツバメの巣が好きか?」「まだそのことを気にしてるの?」紀美子は呆れて尋ねた。「違う!」晋太郎は強く否定した。「俺はただ君がそれが好きかどうか聞い
last updateLast Updated : 2025-01-01
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