紀美子は反射的に電話を取った。「もしもし?」「紀美子!」晴からの声は焦りに満ちていた。「今、時間ある?すぐ晋太郎を迎えに来てくれ!今から位置情報を送る。とにかく早く来てくれ!大変なことになったんだ!!」それを聞いて、紀美子の胸は不安で締め付けられた。彼女が何かを聞く間もなく、晴は電話を切ってしまった。晴が言った、「大変なことになった」という言葉を思い出すと、紀美子は不安で鼓動が早くなった。そして布団を投げ、慌てて服を着た。丁度その時、晴から位置情報が送られてきた。彼女は携帯を開き、地図上に表示された「サキュバスクラブ」という名前を目にすると、冷静さを取り戻した。今は隆一も戻っているし、晴もいる。おそらく彼ら二人に連れ出されて飲みに行ったのだろう。これまで彼らに呼び出されて晋太郎を迎えに行ったことは何度もあった。「大変」などと言われても……紀美子が少し腹を立てながら携帯を手に取り、拒絶のメッセージを送ろうとしたその時、晴から一枚の写真が送られてきた。写真には、頬を赤らめて目を閉じ、ソファにもたれかかる晋太郎の姿が映っていた。普段、彼が友達にここまで振り回されることはない。この写真を見た彼女は、彼がどれほど酒を飲まされたのかを悟った。彼女はため息をつき、メッセージを送った。「分かったわ。今すぐ行く」そしてコートを羽織り、車のキーを手に取った。今回はボディーガードを呼ぶことなく、彼女は自分で車を運転してバーへ向かった。到着すると、紀美子は直接個室に向かった。ドアを開けると、そこには晋太郎一人しかおらず、晴と隆一はどこかに行ってしまっていた。紀美子はまるでからかわれているような気がして、少し腹が立った。彼女は息を呑み、晋太郎の前に歩み寄った。彼の腕を肩に乗せようと身をかがめた瞬間、晋太郎が突然目を開けた。紀美子だと認識すると、晋太郎は彼女を一気に引き寄せ、抱きしめながら後頭部に手を回し、熱いキスをした。酒の匂いと共に感じた熱い息遣いに、紀美子は反射的に押しのけようとした。「晋太郎……んっ……噛まないでよ……痛い……」晋太郎は片手を放し、紀美子の手首をしっかりと掴んだ。彼は紀美子の唇を離したが、暗い個室の中でも紀美子は晋太郎の瞳に映る欲望を感じ取った
Last Updated : 2024-12-25 Read more