紀美子は考えていたところ、再び携帯が鳴った。今度は舞桜からの電話だ。紀美子は受信ボタンを押した。「舞桜」「き、紀美子さん!」舞桜は恐怖に満ちた声で言った。「庭にツバメの巣が山ほど積まれてる!」「山ほど積まれてるってどういうこと?」紀美子は驚きの表情で聞いた。「わからないよ!さっき買い物から帰ってきたら、いきなりすごくたくさんのツバメの巣が増えてたの!」舞桜は舌打ちをして言った。「すごくたくさんって、どれくらい?」紀美子は舞桜の驚きがどれほどのものか想像できなかった。「一目見ただけで、たぶん何十箱もあるよ!」「......」紀美子は言葉を失った。晋太郎がさっき何て言ってたか――全部食べるか。こんなにたくさんのツバメの巣、一晩で食べきるなんて絶対に無理だろう!この男は一体何を考えているの?「ボディーガードに全部倉庫に運ばせて、夜にはみんなで飲んでおこう」紀美子は頭を抱えながら言った。「わ、分かったわ、紀美子さん」紀美子は電話を切り、ため息をついて検査室に向かった。検査室の前に着くと、ドアが開いていて、紀美子は疑問を感じながらドアを押し開けて中を覗き込んだ。中には医者がいるだけで、佳世子の姿は見当たらなかった。紀美子は急いで聞いた。「先生、さっき検査を受けた妊婦さんはどこですか?」「杉浦佳世子という名前の患者さんですね?」医者は振り返って言った。「そうです。彼女はどうしてここにいないんですか?」紀美子はうなずいた。医者はため息をつき、机の上にあった報告書を紀美子に渡しながら言った。「さっきの患者さん、検査結果を見た後、すぐに帰ってしまいました」紀美子は医者から渡された報告書を見つめた。すると、顔色が急変した。報告書には目を刺すような三つの文字が記されていた──エイズ。紀美子は体中が震え、手が止まらなかった。こんなことがあるなんて......佳世子がこんな病気になるなんて、あり得ない!「若いのにこの病気にかかってしまって、彼女自身も壊れてしまったようです。あなたが早く探しに行って、慰めてあげてください」医者は続けて言った。紀美子は我に返り、顔色を失って廊下の両端を見渡した。消防通路が見えた瞬間、考える間もなくそちらへ向かって走り出した。そして最速のスピードで階段を
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