彼は、自分が行おうとしていることは無駄で、余計入江紀美子を怒らせることになると分かっていた。だからただ彼女が1人、雨の中で不満を発散するのを見守ることしかできなかった。紀美子が立ち上がって歩き続けようとすると、森川晋太郎は首を傾げ、ボディーガードに指示した。「小原、彼女が安全に家に着くまで、ついて行け」「はい、晋様!」藤河別荘にて。紀美子は全身が雨でずぶ濡れの状態で露間朔也の前に現れた。朔也は思わず、口に飲んだばかりの牛乳を一気に噴き出した。「G、どうしたんだ、その姿?乗って行った車は?」紀美子は疲れ切った体を引きずって別荘に入った。「車は乗って帰ってこなかった。子供達は?」「2階で遊んでいるよ。竹内さんがついている」朔也は答えた。「分かったわ。ちょっと疲れたから、先に部屋に戻るね」朔也はやはり紀美子のことが心配だった。「一体どうしたんだ?何があったのか、教えてくれよ!」「頭が痛いから、聞かないで」「頭痛?!」朔也は緊張してきた。「もしかして前の傷がまだ癒えていないのか?」「お願い、ほっといて」紀美子が本当に喋りたくないのを見て、朔也は足を止めた。「何かあったら呼んで!」朔也は紀美子の後ろ姿を見て言った。「うん」夜。雨で濡れたせいか、紀美子はかなりの熱が出ていた。朔也は紀美子のことが心配なようで、時々入ってきて彼女の状況を確認していた。紀美子が熱が出ているのに気づいた彼は、慌てて彼女を病院に連れていった。病院に着き、点滴を受けてから、朔也は思い出した。今晩紀美子は、杉浦佳世子と一緒に出かけていた。彼は暫く考えてから、佳世子に電話をかけた。随分経ってから電話が繋がった。「朔也?こんな夜中に電話をしてくるなんて、なんかあった?」「佳世子、紀美子は今日何があったか教えてくれ」朔也は真顔で聞いた。「彼女は雨で全身びしょ濡れの状態で戻ってきた、今熱が出ていて病院で点滴をしている!」「何?!熱?!どの病院にいるの?!今はどうなってるの?」朔也は病院の場所を彼女に教えた。30分後、佳世子と田中晴が慌てて病院の緊急診療室に来た。紀美子が目をきつく閉じたままでベッドに寝ているのを見て、佳世子は思わず眉を寄せた。隣に座ってい
最終更新日 : 2024-11-30 続きを読む