紀美子は慌てて駆け寄り、ゆみを支えて自分の胸に寄りかからせた。「口を開けて、清めの水を飲ませて」紀美子は指示通りに行動し、小林さんが清めの水をゆっくりとゆみの口へ流し込んだ。僅かに飲み込んだところで、ゆみはむせ返って目を開いた。ゆみは小林さんを見て、「キャーッ!」と叫び声を上げ、すばやく紀美子の胸に飛び込んだ。「ママ!」ゆみは泣きじゃくり、「ママ、抱っこして、抱っこ!」と訴えた。ゆみの様子を見て、紀美子の心の中につっかえていたものがズシンと落ちた。彼女はゆみをぎゅっと抱きしめ、小林さんに謝罪の視線を向けた。「すみません、小林さん、うちの子が……」「気にしなくていいよ」小林さんはお椀を持って立ち上がり、呆然と立ち尽くしている朔也の方に目を向けた。朔也はその視線を感じ、茫然とした表情で小林さんを見つめた。「僕の体にも、何か汚れが付いているのか?」朔也の顔色は青ざめていた。「いや、汚れは無いけど、今年は車に乗らない方がいい。運転も控えた方が良いと思う。特に水のある場所には近づかない方がいいね」小林さんは言った。「え?」朔也はわけがわからなかった。紀美子は小さく咳払いをした。「朔也、感謝の言葉を言って」朔也は我に返り、「ありがとうございます、小林さん。覚えておきます、絶対に車は運転しないで、自転車で会社に行きます!」と答えた。少し遠いけれど……朔也は唇を舐めながら呟いた。不潔なものに体を乗っ取られるなんて怖かった。小林さんが何かをしている間、朔也は紀美子の方へとこっそりと歩み寄った。「G、この国のあの術は、何というの?すごいね!」紀美子は首を振った。「知らないよ」「子供の熱は下がったかい?」小林さんは椅子に座って紀美子に尋ねた。紀美子はすぐに手でゆみの額に触れ、「熱が、熱が下がってる!」と驚きの声を上げた。「うん」小林さんはカップにお茶を注ぎながら言った。「この子は生まれつき強い運命をを背負っているが、陽気が足りない。少し身を守る術を学ぶと良いだろう」紀美子は心配そうに小林さんを見つめた。「それって、あなたのような力をですか?もし学ばなければどうなるのですか?」「彼女の運命は特別なんだ。学ばなければ、今日のようなことが何度も起こ
最終更新日 : 2024-11-22 続きを読む