彼は心が疲れていた。会社の問題が山積している上に、家でもこんな厄介なことが起き、恥ずかしいと感じつつも、どうにもできなかった。幸樹は響子を連れて、浩二と明日香の隠れ家へ向かい、響子は怒りを抑えながら、どうにか冷静を保っていた。それもそのはずだ。彼女は怒らざるを得なかった。浩二が愛人を作った相手が明日香だったうえ、彼女をこんな高級なマンションに住まわせているなんて、許しがたいことだった。浩二は明日香を病院に連れて行き、検査の結果、彼女が確かに妊娠していることが分かった。その結果に、浩二は大喜びだった。彼はずっと幸樹一人の子供では少ないと思っており、もう一つの娘が欲しいと願っていたが、響子はスタイルが崩れることを理由に、もう子供を産みたがらなかった。息子が一人いれば十分だと考えていたからだ。もうこの年齢になって、明日香が子供を授かったとなれば、浩二は喜ばないはずがなかった。結局のところ、この年になって、もう一つの子供を産める人がどれほどいるだろうか?子供ができたことで、彼はまだ若々しいと感じ、まるで青春時代に戻ったように錯覚した。そして、明日香との関係で、新たな情熱を見出し、昔のような張り詰めた日常を忘れてしまっていた。さらに、響子が彼を厳しく管理していたこともあり、明日香と一緒にいると、彼は心から幸せを感じていたのだ。明日香は彼に甘え、依存してくるため、浩二は再び男性としての自尊心を取り戻していた。彼は明日香を抱きしめ、二人で帰る途中だった。ちょうどその時、玄関にいた響子に彼らの姿を見られてしまった。響子は本当に明日香の顔を強く平手で二本振りたいと思っていたが、今は冷静さを取り戻していた。暴力が無意味だということを分かっていたのだ。浩二が明日香を嫌うように仕向けなければ、この恥知らずな女を追い出すことはできない。「浩二、今になったのは仕方ないけど、私たちはもうこの歳だわ。離婚なんてしたら他人の笑いものよ。でもね、せめてまともな女を選べないの?こんな汚い女を見つけて、あなた自身も汚すばかりか、水原家の名まで汚してしまって……」今の浩二は興奮しており、響子が明日香のことをここまで酷く言うのを聞いて、当然のように反発した。「家にいればいいものを、こんなところに何しに来たんだ?明日香はお前に何もして
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