「300億円だ」越人が言った。幸樹の唇がぴくりと引きつった。彼は本当に怒鳴りたかった。そんな大金を!「天集グループにとっては大した額ではないと思うけど」越人が付け加えた。「……」幸樹は言葉に詰まった。今の天集グループにはそんな余裕がないのだ。前回の120億で、ほぼ財務が空っぽになっていた。しかし、彼は面子を気にして、他人に「そんな金がない」とは言えない。さらに、そんなことを言えば、取締役たちの耳に入って、さらに面倒なことになるのだ。「少し時間をくれ」彼は一つの方法を考えた。会社にはまだいくつか進行中のプロジェクトがあり、それを手放せば資金を回収できるかもしれない。東辰への投資は諦めたくなかった。これは彼にとって初めてのプロジェクトで、途中で放り出したくないという気持ちが強かった。また、契約も結んでいるので、その資金は必ず投じなければならなかった。それで、彼はこっそりと人脈を使い、進行中のプロジェクトを売却しようとした。運が良かったことに、すぐに買い手が見つかった。一つの海外の会社が、彼が売りに出していたプロジェクトを買い取りたいと言ってきた。しかも全額前払いで。彼は相手が詐欺会社でないことを確認するために、ネットで調べた。その会社はF国で登録されており、設立からわずか3年だが、海外ではすでに有名だった。潤美と名乗れば、誰でもその神秘的な経営者のことを知っていた。彼の投資は全て利益を生み、失敗したことはなかった。一昨年、彼が投資したインターネット事業は大成功を収め、今でも莫大な利益を生み出しており、利益は年々増加していた。他にもエンタメ、生活、インターネット、メディア、製薬など、幅広い分野で利益を上げていた。幸樹はその情報を見て、信頼できる会社だと感じた。それで紹介を通じて、彼は「潤美」と接触し、交渉に入った。価格が適正だったので、幸樹は天集グループの最後の2つの良いプロジェクトを手放した。その結果、400億円が入金された。財務部がその資金を手にした途端、すぐに300億が支払われた。資金を送金した後、幸樹は越人に電話をかけた。「今回は絶対に成功させてくれ、失敗は許されないぞ」越人は机の前に座っている圭介を一瞥しながら、「安心してくれ、これが最後の資金だ。絶対に大丈夫」「最
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