第323話

　しかし、特に慌てることはなかった。

「ただの遊びだ……」

「遊び？」響子は顔を真っ青にして言った。「じゃあ、私も男を見つけて遊んでもいいの？」

浩二の顔色は冷たくなった。「いい加減にしろよ。さっき手を出してきたのに、俺は何も言わなかったが、男の顔は簡単に殴っていいものか？」

響子は心を悶え、胸が裂けるような痛みを感じて、彼女は大声で泣き出した

いい加減にしろって？

彼女は怒り、恨み、苛立ちでいっぱいだった！

今すぐにでも浩二を刺し殺したいくらいだった！

浩二の我慢も限界に近づいていた。そして、この醜く歪んだ女性の表情は、ますます彼に嫌悪感を抱かせた。

響子が涙で顔をぐちゃぐちゃにして泣いているのを見ても、彼には彼女を思いやる気持ちなど全くなく、ただ淡々とした嫌悪しか感じなかった。

「もう若くないのに泣いているのか？幸樹が戻ってきたらどうするんだ？」浩二は彼女をなだめる気などさらさらなかった。どうせなだめても効果がないことは分かっていたからだ。彼女自身がこの現実を受け入れるしかない。「安心しろ。君もこの家も必要だ。遊び終わったらちゃんと帰ってくる」

響子は冷笑した。

遊び終わったら帰ってくる？

じゃあ、彼女は何なんだ？

彼女を何だと思っているんだ？

「幸樹が知ってるのが怖いのか？あんた、もう恥も外聞もないんだな。息子が、年を取った父親がまともじゃないことを知ったら、どう思うだろう？」

どうせ幸樹はすでに知っていた。今、浩二がわりにリラックスした

「彼はもう知っている」

「な、なんだって？」響子は胸を押さえ、呼吸が苦しくなった。幸樹も知っていたのに、彼女には何も言わなかった。

夫に裏切られたのに、息子にまで裏切られていたのか？

彼女の顔は青ざめ、一息もつけず、怒りに倒れこんだ。

浩二も非常に苛立っていた。人生ずっと誠実に生きてきたのに、ただの一人の女性でこんなことになるなんて？こんな大騒ぎをするほどのことだろうか？

彼は長年連れ添った恩情で、無視するわけにもいかず、彼女を抱き上げ、病院へ連れて行こうとした。

家を出た時、ちょうど戻ってきた幸樹と鉢合わせた。

幸樹は気絶した母親を見て、急いで聞いた。「母さんはどうしたのよ？」

「頭が回ってないんだ」浩二は機嫌悪そうに答えた。

「そんなはずはない」幸樹は、響子が普通の理由