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第329話

 明日香は冷たく鼻を鳴らした。

「君は帰った方がいい。気をつけろ、彼女が探しに来るかもしれない」越人は言った。

「私は彼女なんか怖くないわ」明日香は今、自信満々だった。

浩二が彼女の味方をしているのを頼みに、明日香は倒れた響子に向かって意気揚々と言い放った。「浩二は言ったわ、あなたはただの老いぼれ婆だって。私から見れば、婆にすら値しないわ、あんたは残忍で狡猾な妖婆よ。私の純潔を奪い、私を利用して息子を助けさせたのに、私は何を得た?響子、これはあなたへの報いよ!」

そう言って、彼女は響子の体を力強く蹴った。「私はあんたを全て失わせる!覚悟しておきなさい、この最低な女!私が圭介と一緒になれないのは全部あんたのせいよ!私は浩二にあんたを捨てさせて、財産も全部奪って、道端で野垂れ死にさせてやるわ!」

越人は響子の陰険さをよく知っており、明日香のように感情を露わにするのは危険だと思っていた。

しかし、彼はそれを止めようとはしなかった。

ただ明日香を見つめ、ため息をつく。まるで彼女の悲惨な未来を予感しているかのようだった。

響子が彼女を放っておくわけがない。

明日香は今、優勢に立っていたので、響子を侮辱する機会を逃したくなかった。

彼女はさらに何度か酷い言葉を浴びせ、満足げに去っていった。

響子はこれほどの屈辱を受けたのは初めてだった。

そして、これほどまでに抑え込まれたのもまた初めてだった。

彼女が水原家に戻ったのは、1時間後のことだった。

浩二は既に待ちくたびれていて、立ち去ろうとしていた。

響子はようやく遅れて現れた。

水原爺も不機嫌そうだった。「どこへ行ってたんだ?どうしてこんなに遅い?」

響子はまるで魂の抜けたような表情で、ソファーに座り、非難されても何も言わなかった。

浩二は響子を見るとすぐに苛立ちを覚え、彼女に対する嫌悪感が募っていた。「もしお前が明日香を受け入れられないなら、離婚しよう」

響子の無表情だった目がついに動き、浩二を見つめた。「明日香のお腹の子はあなたの子じゃない……」

「また彼女を中傷しようとしているのか?彼女はお前のことを一言も悪く言ってないぞ。俺が彼女と寝たとき、彼女はまだ処女だった。子供が俺のじゃないって?じゃあ、誰の子なんだ?」浩二は明日香のことを言う響子が本当に気に食わなかった。彼女の話を無意味だと
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