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第332話

 幸樹はまだ少し混乱していた。どうして警察がこんなに多くの特殊部隊を動員したのか理解できなかった。それに彼らは銃を持ち、防護盾を構えていた。

彼らが突入してきた瞬間、響子と幸樹を完全に包囲した。

「どういうことだ……」

響子は息子を引き寄せ、後ろに下がらせた。彼が傷つくのを恐れ、低い声で忠告した。

「今、私は会社の責任者だから、すべてのことは私に押し付けて。覚えて、絶対に圭介と正面から対決しない」

「母さん……」

「彼らは私を逮捕しに来たのよ。でも、私は後悔していない」響子は深い未練の目で息子を見つめた。

自分が選んだ道は、もう後戻りできないことを彼女は分かっていた。彼女は決然と警察に向かい、自ら両手を挙げた。

「あなたは二件の凶悪な殺人事件に関与している。すぐに我々と一緒に調査に協力してもらう」

特殊部隊の警官が前に進み、彼女に手錠をかけた。

幸樹は目を大きく見開き、信じられない様子だったが、同時にすべてを理解したかのようだった。

響子が連行されるとき、彼女は振り返り、息子を見つめ、唇の端が微かに上がり、微笑んでいた。

彼女は自分の選択を後悔していなかった。

それは彼女が死を恐れないわけではなく、そうせざるを得なかったからだ。

会社の問題には、誰かが責任を取らなければならない。息子を守りたいなら、彼女がすべてを背負わなければならない。

浩二と明日香に手を出さなかったとしても、彼女は決して楽にはならなかっただろう。

圭介に苦しまれるくらいなら、むしろ自らの命を絶ち、不義理の浩二と、彼女を辱めた明日香に報復するほうがましだ。

響子が逮捕されると、この事件は瞬く間にメディアで大々的に報じられた。

殺人事件、情事のもつれ、さまざまな憶測が飛び交った。

さらに明日香と浩二の関係は、徹底的に暴かれた。

ネット上では、響子が正しかった、明日香は家庭を壊す愛人で、罰せられるべきだという声も上がった。

この事件は、雲都で大きな波紋を呼んだ。

仁平病院。

香織は文彦と共に、心臓手術を支援していた。

手術を終えてから、

香織は誰もいない場所に行き、圭介に電話をかけた。

その時の圭介は、越人と誠と共に書斎にいて、壁の大きなスクリーンには、今日のニュースが流れていた。

彼らは少しも驚かなかった。

まるで、すでに予想していたかのように。
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