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第322話

 「すみません」越人は言った。

話しながら顔を上げると、香織を見て、すぐに「奥様、こんにちは」と言った。

「???」香織は困惑した。

この人物を全然知らなかった。

どうして私のことを知っているの?

そして、誰の奥様だと呼んでいるの?

彼は自分より年上に見えるのに。

「あなたは……」

「私は平沢越人です。ずっと海外にいて、最近戻ってきたばかりです」と越人は答えた。

彼の顔があまり知られていなくて、多くの人々が彼のことを知らないため、圭介は彼を呼び戻したのだ。

F国に会社を設立して以来、彼はずっとそちらの業務を担当してきた。

彼は誠よりも先輩であり、

能力も誠を上回っていた。

そうでなければ、圭介が彼を本社に呼ぶことはなかっただろう。

「私は今、水原社長と話をしていました。これから戻るところです」と越人は、圭介が理解できているかどうか気にして、さらに付け加えた。

香織は、大体会社の話だと理解し、彼が圭介の側近であることを認識したが、単に彼のことを知らなかっただけだった。

彼女は適切な笑みを浮かべて、「分かった。頑張ってね」と言った。

越人は彼女に軽く頭を下げた後、

外に出た。

越人が去って間もなく、響子は一通のメールを受け取った。

彼女はそれが会社の書類だと思っていたが、開けてみると浩二がある女性と乱れる動画だった。

その中で女性の顔は見えなかったが、その裸の体と浩二が絡み合っている様子ははっきり見えた。

浩二の顔は完全に映っており、

さらに長年一緒に寝てきたことで、響子は彼の体の特徴をよく知っていた。

一目で彼が浩二本人だと分かった。

彼女は激怒のあまり気絶してしまった。

家政婦が彼女を病院に運んだ。

彼女は目を覚ますと、すぐに家に戻った。

浩二は外で悪いことをしているため、罪悪感から響子を喜ばせようと、特別にダイヤモンドのネックレスを買っていた。

響子が帰ってきたのを見た浩二は、にっこり笑いながら、「さあ、見て。君のために用意したプレゼントだよ」と言った。

しかし響子の手は拳を強く握りしめ、止まらぬ震えがあった。

彼女は男が浮気性だと知っていたし、新しいものに目が向くのも理解していた。しかし、これほどの長い年月を経ても、浩二は彼女を裏切らないだろうと信じていた。

特に、彼女が何もせずとも、浩二には彼女に
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