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第0267話

「ただの遊びのレースだったのに、本当に俺に指を切らせるつもりか?」山口は信じられないという表情で、綿が差し出したナイフを見つめた。

綿は無邪気なうさぎを装って目をぱちぱちさせ、「あら、お兄さん、そんなこと言っていいの?負けたらただの遊びで済ませるつもり?」と答えた。

山口は言葉に詰まった。

綿はすかさず言葉を続けた。「あなたは遊びだったかもしれないけど、私は全力を尽くしたのよ!さあ、指を切りなさい、無駄口はやめて」

そう言いながら、綿はナイフを山口の胸に放り投げた。

もし自分が負けていたら、山口はどれほど酷いことを言っていたかわからない。

今になって「ただの遊び」と言って逃れようとするなんて、なんてふざけた話だ。

綿は孫山口を頭の先から足の先までじっくりと見つめ、心の中でさらに嘲笑した。

女性に対して敬意を払わない愚か者、下半身でしか物事を考えられない獣には、指を切るくらいでは温情だ。むしろ、もっと過激な制裁が必要だろう。

「お前!」山口は綿を指さし、怒りで爆発寸前だった。

彼は上を見上げ、あの赤毛の若者を探したが、見つけることができなかった。

山はWKクラブの領地で、クラブの名を汚したのに、クラブの連中は何も言わないのか?

山口は歯を食いしばり、手にしたナイフを強く握りしめた。

観客たちの中で煽り声がますます高まった。「山口、お前ビビってるのか?」

「男のくせに、女にも劣るのかよ!」

「お前のせいで、俺たちはパンツ一枚も残らないんだぞ!このヘタレが!」

男たちの罵声は容赦がなく、激しいものだった。

綿は唇を曲げ、山口が指を切るのを期待していた。

緊張が最高潮に達し、山口はまるで処刑台に上がったかのようで、もはや後戻りはできなかった。

彼の胸は上下に激しく動き、手にしたナイフを見つめながら、恐怖に震えていた。

彼は認めなければならなかった。この瞬間、自分は恐怖を感じていることを。

彼は真の相手に出会ってしまったのだ!

しかし、彼がどうしても納得できないのは、その相手が女性だったことだ!

女性に負けたなんて、恥ずかしくて堪らない。この先、この業界でどうやって顔を出せばいいのか?

「なあ、輝明、もう一度言わせてもらうけど、綿がお前から離れてから、明らかに変わったよ」秋年は輝明の耳元で小声でささやいた。

輝明の顔はますます
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