共有

第0162話

どうやらまだ知らない人もいるらしい。

普段、輝明は自分をどう紹介しているのか想像もつかない。まさか独身貴族だと言っているのか?

「橋本社長、もし私が芸能界に入りたいと思ったら、私の旦那は私をプロデュースできると思いますか?」綿は遊び心たっぷりに尋ねた。

橋本社長はぎこちなく笑った。輝明ならもちろんできるに違いない。ただし…

「輝明の妻は、陸川家の長女、嬌ではないのか?」橋本社長は試しに尋ねた。

綿の心は一瞬揺れ、顔から笑顔が消えた。

綿は眉を上げ、グラスの酒を一気に飲み干し、淡々と答えた。「橋本社長、ニュースをもっと見ることをお勧めします。エンタメゴシップは控えめに」

橋本社長は意味深長な一瞥を綿に送り、ぎこちなくその場を去った。

天揚が再び綿の方を見ると、彼女は一人で黙々と酒を飲んでいた。

「どうしたんだ?酔っ払いたいのか?」天揚は綿が飲もうとしていたグラスを取り上げた。

綿はため息をつき、再びグラスを奪い返し、「放っておいてよ」と言った。

「またお嬢様のご機嫌か!」天揚は不満そうに言った。

綿は眉をひそめ、突然怒り出した。「どうしたの?私だって人間だもの、感情だってあるわ!」

天揚は驚いた。

橋本社長が何を言ったのか、どうして綿をこんなに怒らせたのか?

「気分が悪いから先に帰るわ」綿はバッグを手に取り、外へ向かった。

天揚が追いかけようとしたが、綿は振り返りもせずに「追いかけなくていいわ。私はもう大人だもの」と言った。

天揚は無力感に包まれ、その場にとどまるしかなかった。

綿は個室のドアを押し開けると、橋本社長の言葉を思い出して不愉快な気分になった。

——「輝明の妻は、陸川家の長女、嬌ではないのか?」

綿は数歩進んで、ある個室から笑い声が聞こえてきた。

「もちろんだよ、誰が高杉社長と協力したくないって言うんだ?」

「もし高杉氏グループと一緒に仕事ができたら、もう人生に悔いはないよ!」

輝明の名前が出るたびに、綿は思わず目をひそめた。一方でトイレに向かいながら、心の中で文句を言った。

「高杉氏グループがなんだって言うの?何が人生に悔いなしだよ…」

綿は洗面台の前に立ち、橋本社長に触られた場所をきれいにしようと手を洗い続けた。「気持ち悪いエロ親父、ほんとに嫌な奴だ!」

「五十過ぎてまだ若い子を狙って、ほんとにけし
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status