第0126話

輝明は怒りに満ちたまま、その男を見て「出ていけ！」と怒鳴った。

その怒りはあまりにも凄まじく、綿の肩が震え、その男に同情さえ覚えた。

男は口を開けて何かを言おうとしたが、訳もわからず怒鳴られ、その場を立ち去った。

綿は輝明を押しのけ、にっこりと笑いながら「あなたも知ってるでしょ、私は本気だって」と言い、エレベーターのボタンを押して一階に降りようとした。

輝明は彼女の肩が自分の肩に軽く触れるのを感じ、髪の毛が肩にかかり、綺麗な鎖骨とセクシーな体つきがうっすらと見えた。

彼の喉が急に乾燥し、熱くなった。

そして綿の手首を掴んだ。

彼女はつぶらな瞳で見上げ、「高杉さん、まだ何か？」と挑戦的な目で問いかけた。

輝明の息が荒くなった、彼女が「高杉さん」と呼ぶその言葉が耳にこびりついて離れなかった。

高杉さん。高杉さん。

その呼び方が、いつからこんなに腹立たしいものになったのだろうか。

輝明は一歩前に進み、綿をエレベーターの隅に追い詰めた。彼の眉間には深い皺が寄り、目は鋭く、その顔は見慣れないほど険しかった。「桜井、その呼び方は嫌いだ！」

「そうなの？でも、高杉さんには慣れてもらわないとね。これからずっとそう呼ぶんだから。頑張ってね、高杉さん！」綿は微笑みながら、唇を軽く開閉させ、とても色っぽかった。

「高杉さん」と何度も呼びかけるその声が、本当に苛立たしかった。

「呼ぶな」と言えば言うほど、綿は意地になって「高杉さん」と呼び続けた。

彼に何ができると言うのだろうか？

輝明の顔色は見る見るうちに悪くなった。エレベーターのドアが開き、綿が降りようとした瞬間、彼は彼女の腰を引き寄せ、ドアの閉じるボタンを押し、抱き寄せて強引に唇を重ねた。

綿の瞳孔が縮まり、彼を押しのけようとしたが、彼の手によって封じられた。

彼の掌は熱く、まるで綿を焼き尽くすかのようだった。

綿はエレベーターの壁に押し付けられ、手は彼の胸に置かれ、動けなかった。

彼のキスは激しく、何度も彼女の唇を噛み、血の味が広がった。

綿は彼の足を踏もうとしたが、巧みに避けられ、さらに強く抱き寄せられた。

まるでいくらでもキスが足りないかのように、エレベーターのドアが開いたその瞬間、輝明は突然綿を抱き上げて外に連れ出した。

周囲の人々が驚きの声を上げ、「あれは高杉さんと桜井綿じゃない