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第0017話

輝明がレストランを出ると、電話の向こうで秘書の森下が言った。「高杉社長、ちょっと話が……」

「話せ」

「さっき陸川嬌様が社長の行程を尋ねたので、沁香園にいることを教えました。彼女が……」森下の言葉が終わる前に、輝明はレストランの入り口で待っている嬌を見た。

輝明は電話を切った。嬌のか弱い姿を見て、こんなに小柄な彼女がどうやって誘拐犯と戦ったのか想像もつかなかった。

彼は岩段秋年の言葉を思い出した。

——陸川嬌と桜井綿、どちらか一人を選ばなければならない。

彼は嬌を選ばなければならなかった。嬌は素晴らしい人だ。これ以上彼女に負担をかけるわけにはいかない。

輝明は嬌に歩み寄った。「嬌ちゃん」

嬌は振り向き、すぐに笑顔を浮かべた。「明くん」

輝明は優しく目を細めた。「病院でゆっくり休むべきじゃないのか。ここで何をしているんだ?」

「明くん、別荘の件、本当にごめんなさい。一日中落ち着かなかったの。会社や家に行ったけど見つからなくて、森下に行程を聞いたの。明くん、お兄ちゃん、怒らないでね。自分の間違いに気づいたの」彼女は彼の腕を軽く引っ張り、声が柔らかく響いた。

輝明は彼女を理解していた。彼女はいつも自分の前では慎重で、失敗を恐れていた。ただ、彼が本当に彼女を選ぶかどうか確かめたかったのだ。

「怒っていないよ」輝明は彼女の頬をつまみ、手を握った。

「本当?」嬌は不安そうに尋ねた。

輝明の心は深くて、彼の本心を見抜くことはできなかった。彼の優しい視線が本心からなのか、それとも演技なのか、いつも気になっていた。

「嬌、俺を信じてくれ。いいか?」輝明は彼女を優しく見つめ、微笑んだ。嬌はうなずいた。

その時、嬌は後ろを振り返った。綿が中から出てきたのを見て、すぐに呼び止めた。「綿ちゃん!」

綿は立ち止まり、振り返った。嬌は言った。「今日は別荘の件、本当にごめんなさい。私が悪かったの」

綿は返事をせず、車のドアを開けようとした。

彼女にとって、その謝罪はただの口先だけのもので、意味がなかった。

その時、輝明も彼女を呼び止めた。「綿」

嬌は不安そうに輝明の腕を握りしめた。

綿は車のドアにもたれ、無表情で彼を見つめた。「何?」

「明日の朝9時、役所で離婚しよう」輝明の黒い瞳は冷たく響いた。

綿は扇子を握りしめ、一瞬緊張したが、すぐに平静を取り
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