第0019話

綿は気持ちを整え、美香に優しく言った。「おばあさん、もちろんそんなことはありませんよ。外の噂に惑わされないでください」

　綿はおばあさんの前で離婚を認めるつもりはなかった。もしおばあさんが離婚を阻止すれば、高杉は一生心の中の人と結婚できなくなるだろう。彼はもともと自分を嫌っていたので、彼の嫌悪の中で残りの人生を過ごすことは望んでいなかった。

　「今日こんなにきれいに装っているのに、離婚しに来たなんて信じられますか？」綿はその場でくるくると回り、キャミソールが彼女の細さを際立たせた。

　輝明は一息ついたが、綿に疑念を抱いた。最近おばあさんは誕生日の準備で忙しかったのに、どうして急にここに来たのか？

しかも彼らが離婚しようとする日に限って。綿がわざとおばあさんに知らせたのか？彼女は離婚したくないのか？

　輝明は眉をひそめ、思い悩んだ。「信じられないわ。何もなければこんな噂は立たないだろう？」おばあさんは納得しなかった。

　綿は無力感を感じながら言った。「おばあさん、今の時代、噂を流すのは簡単なことです。彼らはただ口を動かすだけで、あなたのように賢いおばあさんがそんな噂を信じるなんて……」

　輝明はおばあさんを扱うのが苦手だったが、綿の忍耐強い対応には感心した。だからおばあさんは綿をこんなに可愛がるのだ。

　綿は少し恥ずかしそうに輝明を一瞥し、美香に言った。「おばあさん、あなたも知っている通り、私はやっと彼と結婚できたのに、簡単に手放すわけがありませんよ」

　「死ぬ時は一緒に死にます！」綿は真剣な表情で誓った。

輝明は眉を下げて微笑んだ。この言葉は耳に馴染みがある。おそらく彼女は以前にも言っていたのだろう。この女は本当に嘘をつくのがうまい。下書きなしで。

　輝明はさらに気づいたことがあった。離婚を提案してから、綿は一度も彼を「明くん」と呼んでいなかった。彼女は「高杉さん」や「前夫」と呼んだり、今は「君」と呼んでいた。

　美香はまだ疑っていた。「本当に？」

　綿は彼女の疑念が解消されないことに気づき、長々と話すのは無駄だと悟り、腕を組んで不満を表した。「おばあさん、今では私のことも信じないのですか？」

　美香は綿が怒りそうなのを見て、急いで彼女の腕を軽く叩きながら言った。「ごめんなさい、ごめんなさい。おばあさんが間違っていたの」

　綿は鼻を鳴ら