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第0023話

綿は輝明の陰鬱な顔を見て、ふと遊び心が湧いてきた。

 彼女は微笑みを浮かべながら司礼の方に歩み寄り、その腕にそっと手を絡ませた。綿は顔を上げて司礼を見つめ、杏のような瞳が輝き、まるで小悪魔のように人を魅了する。

「司礼さん、嬌さんも私たちが似合っていると言ってくれたし、お付き合いを始めてみてもいいですか?」

 司礼は目を細め、輝明と嬌を見渡した。輝明の顔色はすでに真っ黒になっていた。司礼は綿の意図を察し、彼女の遊びに乗ることにした。

彼は綿の細い腰を引き寄せ、低い声で言った。「綿さん、私の告白を受け入れてくれるのですか?」

 綿は微笑み、指先で彼のネクタイを弄びながら、魅惑的な表情を見せた。司礼は彼女の耳元でささやくように、「光栄です」

 司礼は輝明の方を見上げ、その目には挑戦的な光が宿っていた。輝明の目には鋭い怒りが浮かび、司礼の手から彼の顔に移っていった。

司礼の口元にはほのかな得意げな笑みが浮かんだ。

 嬌は輝明の異変を感じ取り、彼の腕を掴んで笑顔で言った。「本当に珍しいわね。司礼さんがこんな風に振る舞うなんて、よほど綿さんが好きなのね」

彼女は元々、輝明と一緒にここに来て綿に優位を見せつけるつもりだったが、逆に立場が逆転してしまった。

 綿は無関心な目で二人を見つめ、その視線には冷ややかさが漂っていた。

司礼は笑顔を浮かべ、「男性というのは、好きな人の前では少しは取り乱すものです。私は確かに綿さんが好きです、隠しません」

 司礼の言葉に、輝明の心は一層不愉快になった。特に、綿が彼に向かって甘い笑顔を見せるのを見た時、輝明の心には熱がこもった。

彼女の笑顔はかつて彼だけに向けられていたのに。

綿が離婚に同意し、すぐに次の恋愛に進んでいる。それは本当に心からのものなのか、それともただの演技なのか?

 嬌は二人に別れを告げ、「それでは、私たちはお邪魔しないようにするわね。明くん、お腹が空いたから食事に行きましょう」と言った。

輝明は綿を見つめながら嬌に答えた。「うん」その言葉には感情がこもっておらず、冷たい響きだけが残った。

 二人が去ると、綿は司礼の腕から手を離した。綿は輝明と嬌の背中を見つめ、その視線は暗かった。

彼女と司礼の親密なやり取りに対しても、輝明は変わらず無関心のようだった。

彼は自分が婚姻中に嬌と関係を持つこと
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