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第 0354 話

彼と「お前か」と言っていた男はまるで別人だった。

彼は目を赤くし、後悔に満ちた表情で言った。「綿さま、間違っていました!ほんとうにお見それしました,どうかご容赦ください!」

綿は「はぁ」と軽く声を出し、全く気にしていない様子で手を振った。「さあ、立ちなさいよ。そんなことしなくていいの」そんなものに価値はない。

男は喉を詰まらせた。

「まさかMを誘拐して、しかももう少しで……」彼は唾を飲み込みながら話し続けたが、その後悔はますます強くなった。

綿はむしろ彼を褒めた。「あんた、なかなかやるじゃない」

男は何も言えなくなった。

この「なかなかやる」を他の人に譲りたい。彼にはそんな度胸はない!

「それで、私と一緒にやっていく気はある?」綿は首を少し傾け、両手を胸の前で組み、実に美しい姿だった。

彼はずっと思っていた。七尺の男が女と一緒にやっていくなんて、とても恥ずかしいことだと。

でも、その相手がMなら。

彼はやりたいと思ったし、とてもやりたいと思った!

雅彦は口をへの字に曲げ、静かに見つめたあと、首を振った。

康史が外から戻ってくると、綿の前に跪く男を見て、驚愕した。

「何やってるんだ?」康史は手に小型のノートパソコンを持ち、口には棒付きキャンディーを咥えていた。

成之は康史を観察しながら、小声で尋ねた。「この弟さんは……?」

「あいつか、うちのハッカー、康史だよ」雅彦は笑って答えた。

成之は唾を飲み込み、目を見開いた。「彼、彼が康史なのか?!」

伝説のM基地のエースハッカー、最強の頭脳。それがまさか少年だったなんて?

「世間ではM基地のハッカーは四十歳過ぎだと言われてるけど、彼は……」成之は驚きで口が開いたままだった。

「彼は20歳だ。」綿が会話に加わった。

成之は完全に麻痺してしまった。

康史は気にする様子もなかった。結局、誰だって彼らを見るとこうやって驚くものだから。

M基地の数人の能人は、皆若かった。

「彼、何する人?」康史は綿に尋ねた。

綿は両手を胸の前で組んで答えた。「私のボディーガード」

雅彦は確かに頼りになるが、M基地の仕事が山積みで、雅彦を自分のボディーガードにするわけにはいかない。

新たな人材を見つけるのが当然だ。

「うん、その体格、その見た目、合格だな」康史は頷きながら言った。まだこの男が自分の
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