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第10話

奈奈は病院で泣き叫び、「私は正義のために動いたのよ!愛人を懲らしめたんだから、何も間違ってない!」と騒ぎ立てていた。

帽子をかぶったおじさんがうんざりした様子で、「お前、何をわめいてるんだ?お前自身が愛人だろうが」と言った。

奈奈はその言葉を聞いて一瞬戸惑い、目の輝きが消えていった。そして、口をぽつりと開き、「愛されていない方が愛人なのよ……愛されていない方が」と呟いた。

傍で見ていた医者が笑いながら、「愛されてるなら、なんで1600万円も払わなきゃいけないんだ?渋い男だな!」と茶化した。

奈奈はついに静かになり落ち込んだ表情を見せた。

「違う……愛されていないのは、あの女の方だ……」

このやり取りが動画で撮影され編集されてネットにアップされた。その動画を見た奈奈の家族はすぐに彼女との縁を切ると宣言し、一銭も払わないと公表した。

一方翔太は現実から逃げ続け、裁判には一度も出席せず、ただ会社に閉じこもり、昼夜を問わず働いていた。

私と連絡が取れなくなった翔太は、自社のウェブサイトをまるでSNSのように使い始めた。

「桜子、今日も14時間働いたよ!褒めてくれ!」

「桜子、今月の会社の売上が10%も上がったよ!すごいだろ!」

彼は毎日、会社の経営状況を私に報告してきた。まるで3年前に戻ったかのように。

でも過去は決して消えることはないし、言わなかったからといって消えるわけでもない。

この3年間の痛みを私は一日たりとも忘れることはなかった。

翔太は本当にビジネスの才能がない。彼の会社は3年経っても、私が新しく始めた支社の1か月分の利益にも及ばない。

今月の売上が上がったのも、私が彼の会社を買収しようとしていることを競合他社が知り価格を意図的に吊り上げたからに過ぎない。

それを彼は自分の努力のおかげだと勘違いしている。

本当に馬鹿だ。

私は義母の携帯を提出し、あの村で行われていた婚闘の悪習を公にした。

映像に映っていた者たちはその夜すべて逮捕された。

さらに調査が進むと、恐ろしい真実が明らかになった。

私はあの村の婚闘の中ではまだ幸運な方だった。

5年前、婚闘に抵抗した女性が牛小屋に閉じ込められ、夜中に発狂した牛に両手を踏みつけられたという。

病院に運ばれた時には、両手は壊死しており、切断するしかなかった。

その婚闘の参加者には
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