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第31話 秘密な取り決め

鈴楠は頭を抱えそうな顔で、「こんなくだらないマネをしてきたのは誰?」と尋ねた。

「意志のやつでさ、あなたに直接渡すようにって頼んだきたの」

「え?意志?」

あの坊っちゃん、ほんとうに迷惑をかけてくるなあ。

美優が笑って言った。「足立淳一は昨夜、家主に海外留学に送り出されたそうよ。次の試験でまた不合格になったら、酷い目に遭わせるって言われているみたい」

「見送りに行けなかったのはちょっと残念だけど、まあ、帰ってきたときに盛大に歓迎しよう」

鈴楠は花束を片付けさせ、ようやく花の強い香りがなくなり、少し気持ちが落ち着いた。

美優は頷き、「私もそう思っているわ。そうだ、前に頼まれた豊恒グループの件だけど、全部調べたわ」と言った。

鈴楠は顔をあげて彼女を見た。美優は微笑みながら言った。「豊恒グループはすでに中身のない空っぽの会社で、あちこちで借金をしまくって、銀行にも巨額の資金を返済できていないの。会社ももうすぐ競売にかけられそうな状態で、残っているのは未完成のクズのようなプロジェクトばかり。誰が関わっても厄介なことになるわ。あの美奈子はあなたを罠にはめようとしてるんじゃない?」

鈴楠は眉を顰め、やはりそうか、罠を仕掛てきたんだと心の中で思った。

それなら、今夜の晩餐会は面白くなりそうだ。

「ありがとうね」

美優は頭をさすりながら言った。「大したことじゃないわ。でも、私はもうあなたのそばにいられないの。ママが香港から帰ってくるの。新しく買収した化粧品会社の研究開発に参加させてくれるって言ってくれたの。知ってるでしょう、これが私の夢なの」

美優の母親は業界で有名なキャリアウーマンで、元々は娘を会社経営に参加させたがっていたが、美優は会社経営よりも研究開発に強い興味があった。今回せっかく巡ってきたチャンスをしっかりと掴むつもりだ。

「いいわね、それじゃあ、秦家のお嬢様が世界一の大富豪になることを祈ってるわ!」鈴楠は笑って言った。

二人が顔を見合わせて微笑み、余計な言葉がなくてもお互いに心が通じていた。

「鈴楠ちゃんもこれから気をつけてね。何かあればすぐ声をかけて。いつでも鈴楠ちゃんの味方だから!」

鈴楠は頷き、「ありがとう、遠慮しないわ」と言った。

二人がしばらく話をしてから、美優はバッグを持って去って
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