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第263話 出てきたよ

「土田さん、今日の仕事の予定は?」

土田蓮は彼女の少し後ろに付きながら、スケジュールを報告した。「午前中の10時に国際ビデオ会議があります。午後2時には啓航グループとのプロジェクトの打ち合わせ、夜7時には明成グループの会長と奥様の金婚式パーティーが予定されています。」

「わかった。」

その言葉が終わると同時に、三井鈴のポケットの携帯電話が鳴り始めた。「もしもし、鈴、忙しい?」

受話器から真理子の声が聞こえてきた。「この前話した、6千万でドレスをデザインしてほしいお客様が、今お店にいるけど。」

「会いたいとおっしゃるから、時間ある?」

三井鈴はオフィスのドアを開けながら尋ねた。「いつ?」

「お客様が、12時前なら大丈夫だって。」

「わかった、ありがとう。」

真理子は電話を切り、相手にコーヒーを差し出した。「金子様、大変申し訳ありません、少々お待ちください。デザイナーがすぐに参りますので…」

金子と呼ばれた女性は微かに頷き、言葉を発しなかった。

その時、店の入り口で見覚えのある姿が立ち止まっている。今日出所した佐藤若菜だ。彼女が最初にしたことは、安田翔平からもらったカードでショッピングを楽しむことだ。

たくさんの服やバッグ、化粧品を買って、ファッションスタジオで新しい髪型に変えた。

数ヶ月間の監禁生活は薄氷を踏むようで、どうやって耐え抜いてきたか誰もわからなかった。

しかし、ついに彼女は出てきた。

目を上げ、目の前のブティックを見つめると、瞳が次第に沈んでいった、つい冷たく鼻で笑いだした。

佐藤若菜は店に入っていった。

「……これ、これも、全部ください。」入店するや否や、佐藤若菜はモデルが着ている新作を指差し、傲慢に言った。

真理子が前に出て口を開こうとした瞬間、顔色が一変し、笑みが一瞬で消え去った。「愛人さん、まさか出てきたなんて…」

真理子は不機嫌そうに言い、その呼び方には遠慮なく「愛人」を付け加えた。

佐藤若菜は怒りがこみ上げてきた。

しかし、彼女はその怒りを抑えながら、冷ややかに嘲笑した。「……何を呆けてるの?さっさと服を持ってきて!」

佐藤若菜の表情は硬直し、傲慢に言った。「……なら、会員登録して。」

そう言って、安田翔平がくれた黒いカードを取り出し、真理子の前に置いた。真理子は全く目をやらずに、容赦なく断った。「
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