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第70話

彼女はただ二宮雅之をちょっとだけ懲らしめたかっただけだ!

「ふざけるな!」

茂は顔をしかめ、翠を指差して言った。「しばらく外出は控えるんだ。家でおとなしくしていなさい」

そう言うと、急いで書斎に向かっていった。

ホテルに戻った後、里香は荷物をまとめ始めた。

実際、里香の持ち物はあまりなく、ここに来てから買ったものばかりだった。

買ったばかりの小さなバッグに、荷物を全部詰め込んだ。片付けが済んだら、ちょうど部屋のドアが開いて、一人の中年の男性が入ってきた。

その後ろには東雲がいて、冷たい目で里香を一瞥した。

里香は本能的に一歩後退した。

なんでそんなに睨むの?

雅之は里香が荷物をまとめ終わったのを見て、近づいて言った。「あとで一緒に帰るから、ちょっと待ってて」

里香はまばたきし、「帰ったら離婚の手続きを…」と言いかけたが、

雅之は突然里香の口を押さえ、「待ってって言ってるんだ」と言った。

そう言って、雅之はあの中年の男性と一緒に書斎に入った。

里香は眉をひそめた。ほんとに、どうして話を最後まで言わせてくれないの?

東雲は書斎のドアの前に立ち、また冷たく里香を見た。

里香も黙ったまま睨み返した。これ以上睨むなら、こいつの目玉を引き抜いてやる!

部屋に戻ると、里香の表情は少しずつ消えていった。

書斎に入った中年の男性は、江口家の家主であり、秋坂商会の会長だった。

彼が直接来るなんて、今回の件と何か関係があるのだろうか?

あれこれ考え込んだところ、里香のスマートフォンが鳴った。見てみると、見知らぬ番号だった。

里香は出るつもりはなかったが、会社の人から何か用事があるかもしれないと思い、やはり出ることにした。

「もしもし?」

電話がつながったが、声が聞こえなかった。

里香は不思議に思いながら、スマートフォンを見たが、接続中の状態だった。

「もしもし、こんにちは?」

「こんにちは…」

極めてかすれた声が電話から聞こえ、里香は背筋に寒気が走り、顔が一瞬白くなった。

里香はすぐに電話を切り、心臓がバクバクしていた!

その声は、恐ろしすぎた!

普通の人が発する声ではなく、ぞっとするような感覚を覚えた!

誰かが里香にいたずらをしているのか?

こんな無駄なことをするなんて、どうかしてる!

里香はその番号を見て、即座に
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