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第399話

彼らは、形だけの関係を保つために、わざわざ里香のスタジオにプロジェクトを回すことさえいとわなかった。

だって、もしかすると、里香が本当に雅之の妻かもしれないからだ。

もしそうなら、雅之にいい顔をしておけば、将来的に会社に有利になると思っているのだろう。

里香は淡々とした表情で「プロジェクトがあるなら、やるだけよ」とだけ言った。

聡がにやりと微笑みながら、「どうやら君はうちのスタジオのラッキーガールだね。今後パーティーがあれば、毎回誘わせてもらうよ」と言った。

里香も笑って、「でも、毎回桜井さんに会えるわけじゃないけど?」と返した。

聡の目が一瞬きらりと輝き、「いや、君がいてくれるだけで十分さ」と言った。

里香はそれ以上何も言わず、自分のデスクに戻って仕事に集中し始めた。提出していた初稿は既に審査を通過していて、クライアントは契約について話すためスタジオに訪れたいと言っていた。

こうして、里香はますます忙しくなっていった。

そんな中、一週間も雅之に会わないままだった。あの夜の冷たい別れが、二人の関係にさらに微妙な影を落としていた。

かおるが里香を食事に誘い、何度か誘って、ようやく実現した。二人は焼肉店へ向かった。

店に入ると、香ばしい肉の匂いが漂っていた。かおるは深く息を吸って、「ここ数日野菜ばっかで死にそうだったよ。やっと肉が食べられる」と嬉しそうに言った。

里香はクスリと笑いながら「いつでも食べられるじゃない?」と返した。

かおるは首を振って、「一人で食べてもつまらないんだよ、里香ちゃんと一緒じゃなきゃさ」と笑顔を見せた。

個室に入ると、かおるはメニューを手に取り、すぐいくつかを注文した。そしてメニューを店員に渡した後、真剣な顔で里香に視線を向け「で、あの連中を動かしてるのって誰かわかった?」と尋ねた。

里香は少し考えてから、「わからないわ。ここしばらく雅之とも会ってないから」と答えた。

かおるは眉を上げて、「へえ?何かあったの?別居中?」

里香は飲み物を一口飲み、「まあ、そんなところ」と淡々と答えた。

「おっと、それはいい話じゃない?次は離婚って感じ?」と楽しげなかおる。「やっとあの男も少しは人間らしくなってきた?」

里香は微笑みながら、「もしそうならいいのにね」と返した。

かおるはため息をつき、「一体あいつは何考えてるん
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