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第332話

雅之は里香の視線に気づき、急に彼女の方を見てきた。

「何を見てるんだ?」

里香のまつげが微かに震えた。

その時、夏実も彼女を見て、突然言った。「里香、見たでしょ?あなたはあの時、彼を助けるべきじゃなかったのよ!私は彼のために足を失ったのに、今の彼は私にこんな仕打ちをしてる。あなたは彼を家に連れて帰って、結婚までしたけど、彼があなたにどうしてる?彼にはあなたの愛を受ける資格なんかない!」

里香は眉をひそめた。

夏実は正気なのか?雅之の前でこんなことを言って、殺されるとは思わないのか?

案の定、雅之の表情は一気に暗くなり、その瞳には冷酷な殺意が浮かんでいた。彼は夏実の義足を一瞥し、突然冷たく言った。「その義足が目障りだな。もう片方の足も義足にしてやろうか?」

夏実は信じられないというように彼を見つめ、「あなた、頭おかしいんじゃないの?どうして私にこんなことをするのよ!」

雅之の目には淡い赤みがかすかに浮かんだが、彼はそれを必死に押さえ込んだ。「お前の両足がダメになったら、一生面倒見てやるよ。衣食住には困らせない」

「いや、やめて!」

夏実は恐怖で後ずさりし、まるで怪物を見るような目で雅之を見つめた。

命を救ってくれた恩人に対して感謝もせず、恩を仇で返す冷血な男だ。

雅之の声が突然冷たくなった。「僕がなんでお前を閉じ込めたのか、分かってるだろう?」

夏実の顔色はさらに青ざめた。「わ、私は何のことだか......」

雅之は冷ややかに夏実を見下ろし、「あの晩、二宮家でお前が言ったこと、嘘じゃなかったのか?」

夏実の体が震えた。冷たい恐怖が彼女を包み込んだ。

一言でも嘘をつけば、雅之は本当にもう片方の足を奪ってしまうかもしれない。

夏実はすでに目的のために一つの足を失っている。もう一つの足を失ったら、彼にどう顔向けすればいいのか。

夏実はごくりと唾を飲み込み、突然涙を流し始め、弱々しく、哀れな声で言った。「雅之、私が悪かったの。全部私のせいよ。彼女があなたと結婚できたのが妬ましかったの。だって2年前に結婚を約束してたのは私だったのに......!」

夏実はすすり泣き、涙が溢れて止まらなかった。「でも今の私は、まるで他人の関係を邪魔してる第三者みたい。そんなはずないのに......」

顔を覆って悲しそうに泣き続ける夏実を雅之はただ冷たく見つ
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