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第289話

「くそっ!」

里香の胸は怒りで大きく上下していた。

桜井はそんな様子を見て、躊躇しながらも口を開く。

「実は、この件に関しては......」

「黙れ!」

「黙れ!」

二人の声が同時にハモり、桜井は慌てて口を閉じた。もう何も言えない。

怖すぎる......

こんな人たちと一緒に生活なんて、絶対無理だ......

怒りに燃える里香は冷笑を浮かべ、背を向けてそのまま歩き出した。

しかし、ドアを開けると、そこには数人のボディガードが立っていた。里香が出ようとすると、すぐに手を伸ばし、彼女を止めようとする。

だが、里香は彼らの存在など見えていないかのように、そのまま真っ直ぐ歩き続けた。

ボディガードたちは慌てた。里香に触れたら、雅之にどんな罰を受けるか分からない。手を切り落とされるかもしれない......

反射的に一歩後退したが、それでも里香を止める構えは崩さなかった。里香は彼らの躊躇いをすぐに察知し、さらに強引に前進した。

こうして奇妙な距離感のまま、彼らはエレベーターの前まで後退してしまった。

先頭のボディガードが額の汗を拭いながら、「奥様、どうか私たちを困らせないでください」と言う。

里香は冷たく答えた。「そっちこそ、私の邪魔をしないで」

困った様子でボディガードが言う。「奥様が出て行ったら、俺たち全員、殺されてしまいます......」

里香は鼻で笑う。「あいつが本当に人を殺すところ、見てみたいものね。むしろ刑務所にでも入ってくれれば、もう誰も私を止められなくなるでしょ?」

ボディガードたちは黙り込む。彼らの額から冷や汗が流れていた。

その時、雅之が後ろから里香をじっと見つめ、顔がますます険しくなっていた。そして突然、前に進み、里香を抱き上げた。

驚いた里香が叫ぶ。「何してるのよ?」

雅之は何も言わず、彼女をそのままスイートルームに連れ戻した。桜井は慌ててスーツケースを持ち、ドアを閉めた。

雅之は里香をベッドに放り投げ、その上に覆いかぶさった。

里香は必死に抵抗したが、雅之は長い脚で里香を押さえつけ、片手で彼女の両手をしっかりと固定した。

「そんなに力があるなら、他に使い道があるだろ?」雅之は低い声で囁き、深い瞳で彼女を見つめた。

怒りに震える里香は、激しい呼吸をしながら睨み返した。「あんた、ほんとに無茶苦茶ね。なんで
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