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第276話

雅之は部屋に入ると同時に、ジャケットを脱ぎ、ネクタイを軽く引っ張りながら、里香の方へまっすぐ歩いてきた。

里香は雅之が近づいてくるのを横目で見て、少し不思議そうに彼を見上げた。だが、次の瞬間、雅之は彼女の首の後ろを掴み、突然キスをしてきた。

雅之の息には、強い酒の匂いが混じっていた。

「んっ!」

里香は一瞬驚き、反射的に抵抗し始めたが、雅之にしっかりと拘束されていて、全く逃げられない。もがくうちに、里香は何かを感じ取り、顔がさらに赤くなった。

雅之はそのまま里香を抱きかかえ、ソファに押し倒し、片足で里香を押さえつけ、ベルトを外し始めた。

バックルの音が鋭く響き、里香はようやく少し息をつくことができた。

「こんなことしちゃダメ!」

雅之は彼女の耳元や頬にキスをしながら、ぼそっと聞いた。「なんでダメなんだ?」

里香は雅之を押し返そうとしたが、彼の体はまるで大きな山のように重く、全く動かせない。

「ダメだってば。私たち、もう離婚するんだから」

里香は息を乱しながらも、なんとか冷静を保とうとした。

「離婚したのか?」

雅之は里香がそんなことを言うのが気に入らなかった。今夜は少し酒を飲んでいたし、目の前の里香があまりにも魅力的で、彼の目には情熱が燃え上がっていた。

里香の唇はすでに腫れ、澄んだ瞳には怒りが浮かんでいた。「きっと離婚するわ!」

雅之は言った。「じゃあ、まだ離婚してないってことだな。昔自分で言ったことを忘れたのか?」

雅之は里香にキスをしながら、身をかがめて彼女の服のボタンを噛んで外し、里香の体に触れるたびに、まるで彼女を溶かすかのようだった。

「僕たちは夫婦だ。今欲しいって言ってるんだから、お前は応えるべきだ」

里香の体はビクッと震えた。

そうだ、昔、自分はそんなことを言ったことがあった。その頃、里香は雅之が心変わりするなんて信じられなかったし、他の女を愛するなんて思いもしなかった。

でも、現実に何度も打ちのめされた。今になって後悔しても、遅いのだろうか?

雅之は里香をしっかりと拘束し、その目元に浮かぶ涙を見て、突然低く笑った。「里香、お前の体は口よりも正直だな」

その言葉と共に、雅之の長い指が里香の腰に触れた。

里香の体はすでに力が抜けていた。雅之は里香の全てを知り尽くしているように、里香もまた雅之を知り尽くしてい
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