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第26話

「こんなの、つまらないよ」

離婚する相手と寝るなんて、どこの世界にそんな都合のいいことがあるだろうか。

里香はそのまま洗面所に行った。

雅之は落ち着いた心が再び苛立ちでいっぱいになった。

里香が出てきたときには、雅之はすでに去っていた。

里香は表情を変えずにキッチンに行き、麺を煮て適当に食事を済ませた後、スマートフォンを取り出して桜井に電話をかけた。

「もしもし、小松さん?今日は休暇を取りたいんだけど、ちょっと手伝ってもらえる?」

桜井は一瞬驚いた。

「なんのために休暇を?」

「離婚の手続きをするために」

余計なことを聞いてしまった。

「わかった。任せて」

「ありがとう」

電話を切ると、里香は立ち上がって皿を洗い始めた。

その後、部屋を片付け始め、大掃除を行った。新しく生まれ変わった部屋を見ながら、何か違和感を感じた。

視線がテーブルに移り、そこにはカップルの水筒があった。

目障りだ。

里香は使っていない箱を取り出し、自分のものではない物を全部詰め込んだ。

水筒、服、靴下、大きなフィットネス器具から小さなひげ剃りやうがい薬まで、すべてを詰め込んで捨てる!

すべて片づけた後、里香は箱の中の物を見つめ、少しぼんやりした。

ここに一年間住んでいた雅之の持ち物はたった一つの箱だけなのか?

里香の指は箱の縁に触れ、目の中に苦い色がちらついた。

運命の相手じゃないから、持ち物がこんなに少なく、里香の生活に溶け込めないのも当然だ。

胸が鋭く痛み、里香は深呼吸をし、箱を抱えてドアの外に置いた。

後で出かけるときにゴミ箱に捨てるつもりだった。

そのとき、雅之が再び訪れ、ドアの前にある箱に気付いた。中の物をちらっと見て、懐かしさを感じたが、顔色がすぐに曇った。

里香はソファに座って果物を食べていたところ、スマートフォンが鳴り出した。里香は電話を取った。

「もしもし?」

「降りてきて」

男性の低く冷淡な声が聞こえた。

「離婚届の用意は済んだの?」

しかし電話は切られた。

「はぁ!なんて嫌な気性だ!」

里香は最後の一口を食べ終わり、立ち上がってバッグを持って階下に降りた。すると、ドアの前の箱がなくなっていた。

「どこに行ったの?まさか誰かに捨てられたのではないでしょうね?」

里香は少し考えたが、どうせ捨てるつもりだったか
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